「致死率90%のエボラ熱が日本にやって来る」「温暖化でデング熱が日本列島を席巻する」――。そんなおどろおどろしいニュースが飛び交うなか、不安を禁じ得ない人は多いだろう。気がつけば集団感染・院内感染のニュースが相次いでいる結核も心配だ。「未知の病気」「古くて新しい病気」が、今静かにあなたや家族の生活を蝕み始めている。最もいけないのは、不安に苛まれてパニックを起こすことだ。専門家の声を交えながら、得体の知れない「魔の感染症」の正体や予防法を紹介すると共に、それらにまつわる嘘と真実を検証しよう。(取材・文/池田園子、編集協力/プレスラボ)

エボラ熱、デング熱、結核――。
日本列島を震え上がらせる「魔の感染症」

「最近、怖い病気が多くなったな……」

 そう感じている読者は、少なくないのではないだろうか。

 西アフリカで感染が拡大し続ける「エボラウイルス感染症」(通称:エボラ熱、エボラ出血熱)のニュースが報じられてから間もなく、今度は東京・代々木公園における「デング熱」の国内感染が70年ぶりに発覚した。

 エボラウイルス感染症は致死率が非常に高い感染症として知られ、グローバル化で人の往来が激しくなった現在、アフリカから遠く離れた日本で暮らす我々にとっても、無視できない病気になりつつあると言われる。

 またデング熱は、多くの場合症状が軽くて済むが、人によっては重症化する場合がある。媒介となるヒトスジシマカの生息地域は、温暖化により年々広がっていると報じられている。こうした馴染みの薄い感染症に多くの人々は不安を抱き、関係者は対応に追われている。

 そればかりではない。足もとではまだ大きなニュースになっていないものの、日本人なら一度は耳にしたことがある病「結核」も、気がつけば集団感染・院内感染のニュースが相次いでいる。結核(肺結核)は戦前に大流行し、「死の病」と恐れられた。2013年公開のジブリ映画『風立ちぬ』で、ヒロインの菜穂子がこの病と戦う姿が印象的に描かれていたことは記憶に新しい。

 インフルエンザ、ノロウイルス、腸管出血性大腸菌感染症、手足口病、マイコプラズマ肺炎など、日本人を蝕む感染症の種類は多岐に渡る。だが最近名前が上がることの多い感染症には、これまで日本に住んでいれば心配のなかった病気、日本人がその恐ろしさを忘れていた病気が多いことに気づかされる。得体が知れないぶん、我々の不安は際限なく広がって行く。「未知の病気」「古くて新しい病気」が、今静かにあなたや家族の生活を蝕み始めているのだ。