家具・ホームファッション専門店ニトリの2009年2月期決算は、22期連続増収増益という文句のつけようのない結果だった。連結売上高前年比12.3%増の2440億円、経常利益は27.9%増の339億円となった。

 決算発表の席上、似鳥昭雄社長は今後の消費環境について「底はまだまだ。今年も小売り業界は全滅だろうね」と厳しく見る。その言葉通り、同社の2010年2月期既存店売上高の見通しは横ばい。しかし似鳥社長の表情からは、その数字はあくまで控えめな予想であり、今後も業績を伸ばせるという自信がのぞく。

 急激に消費環境が悪化した2008年8月以降も月次既存店売上高は堅調だった。下期(2008年9月~2009年2月末)は前期比3.2%増。小売り業界の代表的業態である百貨店の12カ月連続、GMS(総合スーパー)の3カ月連続の前年割れのなかで、環境悪化をものともしない。

 それを可能にしたのが、圧倒的な価格競争力だ。店頭では「安くないと買い物は楽しくない」という似鳥社長の買い物観を具現化している。

 同社では期初、管理部門も含めたあらゆる部署からコスト削減策を提出させる。それをすべて、店頭価格の値下げ原資にしている。前期は約40億円分のコスト削減原資を生み出した。それが、2008年5月、8月、11月、2月の「値下げ宣言。」に結びついている。

 同社は小売り店だが、商品を東南アジアの自社工場で企画・製造している。“家具のSPA(製造小売り業)”といわれる所以だ。商流の川上から川下まで一気通貫したビジネスモデルなため、中間コストを極限まで圧縮できる。そのうえ、前期は円高でその値下げ原資がさらに膨らんだ。

 景気悪化で財布の紐が硬くなっている消費者にとっては、値下げは購買に結びつく重要な要素。下期、既存店客単価は1.6%下落したが、同客数が2.1%増加し、売上高前年比増を確保した。

 他の小売り業態だけでなく、外食業界でも値下げの動きは起こっているが、客数増が客単価下落を補って増収を確保するケースは、実はあまり見られない。ニトリの戦略はズバリはまっている。

 今期も「最低2回は値下げを行なう」(似鳥社長)という。それに「下期に向けて再び為替は1ドル90円前後まで行く」(同)と予想する。今期も経済環境は悪くなることはあっても、良くなることは期待できない。悪環境にこそニトリは“はまる”。

(「週刊ダイヤモンド」編集部 片田江康男)