同じ意味を指していても、言葉の違いで、人は感情をあらわにする。新聞記者時代のある出来事がきっかけで、人が「本音」を話す瞬間を知りました。まさに、『一瞬で「本音」を聞き出す技術』の原点がここに! 本書序章を2回にわけてご紹介します。

本音を聞き出すきっかけとなった「家族」と「遺族」の差

 知らない方もいると思いますが、僕は芸能リポーターという職業につく前、雑誌記者、そして、新聞記者をしていた時期がありました。意外ですか?

 記者当時、日本中を揺るがす大きな事故が発生し、現地へ取材に行きました。

 公衆電話から会社に電話をし、「そっちの状況はどうだ?」と聞かれた僕は何の考えもなしに、「ご遺族の方がたくさん集まっていらっしゃいます」と答えたのです。

 その瞬間、後ろに並んでいた男性から、「遺族ってなんだ!」と、思いっきり頭を殴られました。

 無意識にしてしまった発言ですが、これがある意味、僕の人生においてターニングポイントとなった大きな出来事の一つでした。何が問題だったかおわかりでしょうか?

 僕は、「ご遺族」ではなく「ご家族」と言うべきだったんです。

 その男性にとっては当然「家族」と言ってほしいというのが本音。

 普段、何気なく使っている言葉でも、状況によって、相手の気持ちはプラスにもマイナスにも左右される。相手が本音を露わにする可能性に触れた瞬間でもありました。