大ベストセラー『夢をかなえる勉強法』の著者であり、司法試験短期合格者の輩出数全国トップクラスの「伊藤塾」塾長・伊藤真氏。『本物の勉強法』の著者であり、勉強ゼロ→ラサール高校→東大→司法試験→裁判官→弁護士となった白川敬裕氏。二人の「勉強法・対談」をお届けします(撮影/石郷友仁)

「スランプ」は
努力をしている人にしか訪れない

スランプになったら安心していい!?<br />【伊藤真×白川敬裕】(第2回)伊藤 真(いとう・まこと)
1958年、東京生まれ。伊藤塾塾長。81年、東京大学在学中に司法試験合格。その後、受験指導を始めたところ、たちまち人気講師となり、95年、「伊藤真の司法試験塾(現、伊藤塾)」を開設する。「伊藤メソッド」と呼ばれる革新的な勉強法を導入し、司法試験短期合格者の輩出数全国トップクラスの実績を不動のものとする。「合格後を考える」という独自の指導理念が評判を呼び、「カリスマ塾長」としてその名を知られている。現在、弁護士として、「1人1票」の実現のために奮闘中。主な著書に『夢をかなえる時間術』『一点集中力』『伊藤真の兵法』(以上、サンマーク出版)、『伊藤真試験対策講座(全15巻)』(弘文堂)、『中高生のための憲法教室』(岩波書店)、『憲法の力』(集英社)など、多数。

白川:司法試験は長期戦ですから、ときには落ち込んだり、スランプを感じることもあります。私は大学1年のときに、「軽いうつ状態」になってしまって、勉強をする意欲も、学校に行く気力も失い欠けたことがありました。
 いったん実家(福岡県)に戻って、療養をして、なんとかやる気を取り戻すことができたのですが、伊藤先生は「伊藤塾」の受講生がスランプに陥ったとき、どのようなアドバイスを送っているのですか?

伊藤:「スランプおめでとう!」って、言ってます(笑)。だって、「スランプは頑張った証」ですよね
 スランプを「定義」してみると、「『自分の努力に見合うだけの成果が上がっていない』と自分が感じている状態」のことです。ということは、「努力をしていない人」にスランプはこないんです。
 だからスランプを怖がってはいけないし、むしろ、頑張っている証拠なのだから、安心していいわけです。
 人間は、「振れ幅」があるのが当たり前です。いいときも、悪いときもある。スランプを防ぐことはできないのですから、「振れ幅があること」を受け入れたうえで、勉強をすればいいと思う。

白川:私が司法試験を最初に受けたのは、大学3年のときです。当時の私は、スランプがなかったんです。つまり、そこまでの努力をまだしていなかったんですね。
 でも、「なんとかなる」と甘く考えていました。模擬試験でもいい点数が取れなかったのに、根拠なく「自分は司法試験に受かる!」と思っていたんです。結果は、玉砕して不合格(笑)。
それまでの私は、不合格を経験したことがなくて、一度も、「大失敗」をしたことがなかった。だから、自分を「過信」していたんだと思います。当時、司法試験の不合格者には成績表が通知されました。落ちたといっても、「B評価」(A評価=あと一歩で合格)は取れているだろうと思っていたら、「総合E評価」だったんです。
 ようは、箸にも棒にもかからなかった(笑)。余裕で落ちたわけです。そのあとからですね、本当に、真剣に勉強をするようになったのは。

伊藤:真剣に勉強するようになると、スランプを感じるようになりませんか。

白川:なりました。意識が変わったのだと思います。もちろん、すぐに成績が上がったわけではありません。必死に勉強しても、思うように模擬試験の点数は上がらなかったんです。
「自分は、実は、かなり頭が悪いんじゃないか?」と落ち込んだこともありましたけど(笑)、「スランプは必ず乗り越えられる」と信じていました。ですので、当時、伊藤先生の講義でいただいた「やればできる! 必ずできる!」というメッセージは、本当に心強かったですね。