就職サイトを活用した「ネット採用」が定着して、およそ15年。企業にとっては採用を効率的に進めるうえで、欠くことのできないツールと認識されています。しかしながら、昨今では、その弊害も指摘されるようになりました。自社に最適な人材を確保するためにふさわしい方法は何か。そのことをあらためて検討する必要がありそうです。

自社に合った採用手法を再検討する

 この「採用」カテゴリーでは、「いい人材」を採用するための手法や工夫について、実践を重ねている人事部門の方に語っていただきます。

 採用にはおそらく普遍的な手法もあるのでしょうが、業種や企業規模、もしくは企業風土にも応じた、「自社に合った手法」があるはずです。

 わかりやすく言えば、500人採用するケースと、5人のケースとでは、自ずと手法が違ってくることでしょう。

 採用においては「母集団形成」が重要だと、よく言われます。それは間違いではありませんが、5人しか採用しない企業が5000人もの母集団形成をする必要はありません。5人のために、5000通のエントリーシートを読みますか?無理であり、無駄な努力でしょう。

 毎年、8~10人の新卒採用を実施する、ある中小企業の人事担当者がこう言っていました。

「就活サイトを使って新卒採用をしているのですが、そこで当社にエントリーしてくれた優秀層は、内定を出してもほぼ100%内定辞退をして他社に行ってしまいます。結局、当社に入社するのは、社員がOBとして声をかけた、大学の後輩たち。先輩とのつながりで入社することから、定着率もいいですし、私たちの想像以上に成長するんです」

 その会社が就職サイトに募集情報を掲載するために払っている金額を聞いて、びっくりしました。10人の新人を対象に新入社員研修を実施し、さらに半年後のフォローアップ研修を行っても、まだお釣りがくる金額。しかも、その出費は優秀人材の確保にはつながっていない。

「まあ、税金のようなもんですね」。そんな人事担当者のつぶやきを忘れることができません。

アナログ部分の強化で
採用の精度は跳ね上がる

 ここでは就職サイトの批判をしたいわけではありません。言いたいのは普遍的手法と、その企業ならではの個別の手法の両方があるだろう、ということです。

 5人の採用なら5000人もの母集団形成は必要なく、上記の中小企業のように入社3年目までの若手社員に母校の後輩を数人づつ集めさせて選考する、というやり方も有効です。5000人集めたときと比べて、結果、採用した人材の質は大差ない。私は仮説的にそう思います。なぜなら母校の後輩を集めるという手法だと、その「素の姿」を知っているので、通常の面接よりはるかに精度が高いはずだからです。