「金! 金! もっと金!」
“拝金主義”で闘った企業戦士たち

「人はなんだかんだ言っても金が欲しい。しかも、将来ではなく今の金だ。要するに金なのだ。一緒に働いて成果を出し、そのご褒美としてたくさんのお金をもらおうじゃないか!」

 これは、就職活動中だった私が、とある急成長企業の30代後半と思しき営業部長からかけられた言葉だ。彼はそのあと「この夏のボーナスは400万円だった。冬はもっと多いだろう」と得意げに語った。

 ときはバブル前夜の1986年。景気の波に乗った会社はすでに十分ウハウハだった時期だ。そのびっくりするようなボーナスの額は、彼にとって学生を獲得するための一番の殺し文句だったのだろう。当時はこのように営業力に重点を置いた、“拝金主義”と呼ばれるような企業がほかにもいろいろあった。なかでもこの企業は異彩を放っていたが。

 田舎者の私には、このむき出しの拝金主義の世界でやっていくイメージがまったく持てずに、このお申し出を丁重にお断りすることにした。しかし、この企業に対して“アンチ”の気持ちを持ったわけではない。

 その企業の社員はみな歴戦の勇士のような面構えで、全身から仕事への闘志と自信がみなぎっていた。“サラリーマン”というよりは“仕事人”。戦場で闘う戦士のようだった。

 その一方、就職活動で他の企業の社員と話しても、彼らが語るのは“企業の業績”だった。そのため、立派なのは企業であって、話をしている本人が立派だとはとても思えない。しかし、この企業の社員はみな“自分の成果”を語った。その姿は頼もしく、純粋に「すごい強者揃いだな」と尊敬の念を抱いたものだ。