部長や課長が現場を仕切れず
入社数年目の女子を中心に回る職場

 1年ほど前、日本のある大手企業の人事でお話をうかがったときのことだ。その企業では、社内イントラネットで「社内SNS」を立ち上げ、実験的に一部の社員に使ってもらったそうだ。そのときに、面白いことがわかったという。

 SNSで中心人物になっている人は、部長でも課長でもなく、入社数年目の一般女子社員だった。ここでいう「中心」とは、最も多くのメンバーからアクセスされ、また本人もアクセスしているという意味だ。そしてそういう人物は、社内情報に詳しい。特に社員同士の人間関係などについて、よく知っている。

 それだけではない。その部署では彼女を中心に仕事が回っていた。入社時からそこに配属されていた彼女は、現場のノウハウを全て吸収し、異動により新しく配属された社員には、課長だろうが派遣社員だろうが、仕事を教える立場だった。

 もともと人あたりが良く、教えるのもうまいので、自然と彼女は皆から頼られ、慕われる存在となっていた。SNSで中心となるのもうなずける話しだ。

 本来、組織図の中で「中心」となる人物は、そのセクションの長であるべきだ。課長や部長が仕事の中心となり、仕切るべきである。だが、現実にはそうなっていない組織は多い。いや、そんな組織のほうが多いだろう。

 こんな例もある。ある金融系大手企業では、人事部の課長、部長の職は、社内で出世するために必ず通らなくてはならないポジションとしている。基本的には全ての社員は3~4年に一度異動させるが、将来幹部候補として見込みのある社員は人事部の役職に就く。

 当然、そうなると人事のことを一切知らない課長や部長も出てくる。その面倒を見るのが、部下の仕事となる。その部下の中で最も仕事のできる一般社員が、実は「仕事の中心」になる。仕事を一生懸命覚えようする課長や部長もいるが、中には「数年我慢すれば役員だ」と思って、全てを部下に丸投げし、やり過ごそうとした部長もいた。