「ついにヤフーもか……」

 メディア業界関係者からは今、ヤフーの広告営業が変調を来しているといううわさが聞こえてくる。ヤフーといえば1996年の創業以来、増収増益基調を続けている超優良企業。だが、1月末に発表される同社の第3四半期決算にサプライズがあるのでは、と注目されているのだ。

 事実、未曾有の不景気により、金融、自動車、不動産、人材などヤフーへの広告出稿が多い業種は揃って大打撃を受けている。

 これまではテレビや新聞の広告が減少しても、ネット広告は伸び続けてきた。ところが、喜多埜裕明・ヤフー取締役最高執行責任者PS本部長は「今回はネットも含めて、広告費を一律カットという企業が多い。正直、今回の不景気の影響は大きい」と漏らす。

 それでも、業界人注目の第3四半期決算はなんとか乗り切れそうだ。というのも、本格的な不景気が始まったのは9月以降で、その時点ですでに年末までの広告の多くが契約されていたからだ。

 「今回の決算はあまりの伸び率の鈍化に皆さんが驚くというレベルではないと思う」(喜多埜取締役)。不調のうわさには他のメディア関係者のやっかみも半分含まれているかもしれない。

 しかし、問題は今期以降。ここにきて、同社の広告の表示頻度を減らすなど契約内容を見直す大企業がちらほらと出てきているのだ。

 とはいっても、不景気のため広告がいっさいなくなるということはない。むしろ広告効果に敏感になった大企業は出稿先を厳選し始めている。

 そのときに旧来のメディアを選ぶのか、ネットを選ぶのか。「じつは、企業の広告費用の見直しはチャンスでもある」(喜多埜取締役)。

 未曾有の不景気は、ネットの勝ち組を減速させるのか、それともかえって加速させるのか。来期以降にはそれがわかる。

(『週刊ダイヤモンド』編集部 清水量介 )