意表を突いた「黒田バズーカ砲第二弾」
規模は小ぶりだが将来のコストは大きい

 10月31日、日銀の黒田総裁は、昨年4月の異次元の金融緩和策に続く、思い切った追加金融緩和策(バズーカ砲第二弾)を発表した。

 今回の日銀の措置については、投資家や経済専門家の多くが予想していなかったため、発表をきっかけに、株価は1日で700円以上暴騰し、為替市場では一挙に1ドル=112円台までドル高・円安が進むことになった。

 今回の緩和策の主な内容は、資金供給量を年間約10兆円~20兆円増やし、長期国債の購入額も約30兆円増額すること、それと同時に株式の上場投信(ETF)と不動産投信(REIT)の購入額を3倍に増やすことだ。

 冷静に考えると、追加策の金額自体はそれほど大きな規模ではない。むしろ、「バズーカ砲第二弾」と呼ぶにはやや小ぶりだ。しかし、なんといってもタイミングが絶妙だった。

 ほとんどの人が予想していなかったとき、突然降ってわいたように日銀の決定がアナウンスされたことが、人々の驚きを誘った。海外のファンドマネジャー連中の中には、「黒田日銀総裁の人々を驚かす能力は、日本人とは思えない」と指摘する向きもある。

 ただし、黒田総裁が演出した“驚き”は永久に続くわけではない。その効果は、いずれ必ず雲散する。重要なポイントは、これほど大規模な緩和策を実行したことに伴う「コスト」が無視できないことだ。

 一段と進んだ円安は、株価を押し上げる効果を持つ一方で、輸入物価を押し上げ、輸入企業や家計部門にマイナスの効果をもたらす。また、緩和策の出口で金融市場が混乱したり、経済が落ち込むことも考えられる。そのコストは決して小さくはないはずだ。