クリスマス・イブの24日、麻生太郎内閣は、総額88兆5480億円(当初予算ベースで前年度比6.6%増)という過去最大規模の一般会計を柱にした2009年度の政府予算案を決定した。2008年度の第2次補正予算とあわせて、年明けの通常国会に提出する方針だ。

 今回の予算や税制改革は、一般歳出規模を過去最大に膨らませることによって、個人消費、企業の投資、純輸出の落ち込みで一段と深刻化する経済に歯止めをかけようとするものだ。具体的な中身の面でも、低炭素(CO2)社会の構築によって地球環境の保護を目指す企業の支援など、それなりにユニークな試みを盛り込んだ。

 ところが、それらの数少ない長所はまったく目立たず、正当な評価を受けていない。考えて見てほしい。今回の予算案が、国民にとって、魅力的なクリスマス・プレゼントに映ったと言えるだろうか。

 低い評価の原因は、麻生太郎首相の不人気や定額給付金に代表される「ばら撒き」「無駄遣い」への不信感だけではない。より大きな原因として、政府のこれまでの対応や施策が、散発的で場当たり的なものの域を出ていないのではないかとの懸念が根底に存在するはずだ(これが、単なる「懸念」ではないとのご批判もあろう)。

 こうした中で、今、何よりも必要なのは、「100年に一度」と言われる世界的な危機を克服するための明確な処方箋、あるいは、分かり易いロードマップである。そこには、財政、金融、規制、産業、通商、競争政策などを総動員する覚悟を示すことが大切だ。特に、最も力強い即効薬となり得る財政においては、決して従来型の効果の薄い公共事業を復活させないという決意を表明したうえで、新たな高齢化社会や低炭素社会作りに役立ち、かつ乗数効果の高い、インフラの整備を通じて、雇用や実需を生み出す戦略を示すべきなのだ。そして、その着実な実行を公約することが求められているはずである。

 政府・与党にその能力がないと思うならば、野党・民主党がその案を出してもよい。あるいは、経済産業省案や総務省案といった個別の省庁案があってもよいのではないか。今こそ、永田町や霞が関、あるいは民間のシンクタンクがそういう構想力を競うべきときである。

 最近の動向から、方向性や着眼点はなかなか素晴らしいが、それだけでは経済のてこ入れという点で効果が乏しいのではないか、という例をいくつか示しておきたい。