中国がアジアのインフラ整備に乗り出す。11月、北京で開催されたアジア太平洋経済協力会議(APEC)で、中国は自ら主導権を握るインフラ整備「一帯一路」構想をぶち上げた。この構想が持つ影響力は計り知れない。

「一帯一路」は、インフラ整備で陸と海の両方のシルクロードと経済圏を構築するという構想だが、すでにアジアの各国各地で動き出している。その点と点を結び合わせれば、中国から西に延びる「陸と海の新シルクロード」が完成する。

 中国は今、道路、鉄道、そして港湾の整備を急いでいる。20を超える国と地域をこの計画に巻き込もうとしており、中国はすでに個別に交渉を進めている。

 パキスタンとの間では「中パ経済回廊(CPEC)」の構築が加速している。この「CPEC」は新疆ウイグル自治区のカシュガルから、パキスタンの首都カラチを経てアラビア海に面するグワダル港を結ぶもので、道路、鉄道、パイプライン、港湾などのインフラ整備が着々と進んでいる。

“独自のやり方”で動く中国
「富裕国になりたければ中国と手を組め」

 従来、途上国のインフラに対しては、政府開発援助(ODA)などを中心とした国際機関による援助がその需要に応えてきた。日本も世界の経済大国の責任という認識のもと、アジアを重視した援助を行ってきた。こうした援助により、道路は舗装され、橋がかかり、村に電気が灯るようになった。ところが、こうした途上国のインフラ整備にも中国の影が延び、“独自のやり方”で案件を受注するようになった。

 国際援助は従来、先進国ドナーの間でルールを共有しながら行われてきた。それを決めるのが経済協力開発機構(OECD)の中の3委員会の1つである開発援助委員会(DAC:Development Assistance Committee)であり、現在、日本を含む西側29ヵ国が加盟している。他方、貧困削減や不平等の解消などを根底に、質重視の思想を持つDACの縛りを受け、逆に加盟国は途上国の現実やニーズに即した援助ができないなどの弊害も存在した。