景気の悪いニュースばかりが聞こえてくるなか、順調に販売が伸びている商品がある。「電動アシスト自転車」である。

 2000年以降、電動アシスト自転車の国内市場は右肩上がりで拡大。自転車産業振興協会の統計によれば、2007年の出荷台数は28万3000台で5年前と比べると42%の増、2008年1~7月でも前年比8%の増だ。

 市場拡大の背景には、まず商品の進化がある。1993年にヤマハ発動機が世界で初めて発売した電動アシスト自転車は、その後、電池の進化や車体の軽量化などで性能が向上。バリエーションも多彩になった。「当初は“シニア向け”ととらえられていたが、より低価格なものやおしゃれなものを投入し、今では主婦や通勤・通学に使う人にもユーザーが広がった」(ヤマハ発動機)。昨今の健康意識、環境意識の高まり、そしてガソリン価格の高騰が、これを後押しした。

 自転車市場そのものは、近年頭打ちの状況だ。一方で、中国などからの輸入が増えている。付加価値の高い電動アシスト自転車は、まさに業界の“期待の星”だ。

 さらに、日本以上の勢いで市場が急拡大している地域がある。欧州だ。

 ドイツでは、2007年の販売台数が2005年の3倍の6万5000台に増。2008年は8~10万台という予測だ。オランダの2007年販売台数は前年比倍増の9万台で、2008年は12万台を予測。フランス、イタリアも各66%増、33%増である(2007年前年比)。

 背景は国内と同じだが、欧州の環境意識の高さが、いっそう追い風を強くしている。たとえばドイツのシュトゥットガルト市では、市民が電動アシスト自転車を共同利用できるシステムの大規模なテストを計画中だ。

 欧州で販売されているものは現地メーカー製や中国・台湾製が主で、現在のところ、日本メーカーは事実上“カヤの外”である。ただし、それは「完成車」での話だ。

 国内でトップシェアのパナソニック サイクルテックは、電池、モーター、制御装置からなる「ドライブユニット」を他社にも供給している。これが、欧州メーカーにも採用されているのだ。「1999年に輸出を開始して以来、毎年数十%伸びており、2007年の輸出は2006年比70%の増」(同社)。新型電池を開発し、昨年末に事業化を発表した東芝も、欧州の自転車市場に注目しているという。

 ジェトロ・デュッセルドルフセンターの小野寺栄一氏は、「先日ドイツで開催された世界最大の自転車展示会に出品したメーカーは、大きな反響を得ていた。性能が良く、ブランド力もある日本の製品は、低価格が武器の中国・台湾製にも十分太刀打ちできる」と語る。

 自転車部品では、すでに圧倒的な世界シェアを誇るシマノという存在がある。電動アシスト自転車で、“第二のシマノ”が出現する可能性もありそうだ。

(『週刊ダイヤモンド』編集部 河野拓郎)