2014年が終わろうとしている。この一年はマスメディアによって綺羅星のように祭り上げられ、流れ星ごとくに消えるどころか、奈落の底まで落ちていった人々がニュースを賑わせた特異な年であった。彼らがどのように生まれ、メディアがどう関わったのかを振り返ってみたい。(取材・文/ライター 唐仁原俊博) 

自らのキャラを際立たせる

 新年早々、小保方晴子氏という大スターが誕生した。1月29日、小保方氏はSTAP細胞に関する研究成果を発表、翌30日にはネイチャーに論文が掲載された。「生物界の常識をくつがえす大発見」とされ、iPS細胞に続き、再び日本人が再生医療分野で画期的な成果を収めたということで日本中が興奮し、研究内容と同等、あるいはそれ以上に彼女のパーソナリティにも注目が集まった。

 ピンクや黄色の壁、実験器具にはムーミンがプリントされたファンシーな研究室で割烹着に身を包み、実験に勤しむ彼女の姿が連日報道された。しかし、彼女が輝きを放ったのはたった半月のことだった。2月17日に理化学研究所が論文に関する疑惑の調査を開始。その後、ネイチャーは論文を取り下げ、博士論文でも捏造や改ざんが見られたことで博士号も失った。

 2月には全ろうの作曲家としてにわかに注目を集めていた佐村河内守氏が、ゴーストライターを使って活動していたことが明らかになった。実際に作曲を担当していた新垣隆氏によれば、佐村河内氏とは普通にしゃべりながら意思疎通し、新垣氏が録音したものを聴かせて曲の構想を練ったこともあるという。佐村河内氏は三枝成彰氏から激賞されていたし、テレビで紹介されたこともあった。しかし、彼の存在を日本中に知らしめたのは、2013年3月に放送されたNHKスペシャル『魂の旋律~音を失った作曲家~』だろう。この番組以降、民放でも盛んに取り上げられ、悲劇の作曲家として、現代のベートーベンとして感動した人は少なくないだろう。

 小保方氏と佐村河内氏に共通するのは、どうすればマスメディアに受けるかということを認識したうえで、メディアを最大限に活用していたことにある。例えば小保方氏の割烹着。中日新聞は3月、理研が組織ぐるみで小保方氏のイメージ戦略を推し進め、割烹着もその一部であったと報道した。それに対して小保方氏本人が4月の会見で、3年ほど前から着用していたと反論する。しかし若山照彦・山梨大学教授は6月、小保方氏が割烹着を着て実験をしているのを見たことがないと話した。