後世の日本人が振り返ると、2014年は日本の歴史の転換点だったと評されるかもしれない。7月には、安倍政権が集団的自衛権行使容認の閣議決定を行った。どのような限定をつけようとも、外国で戦争する権利を認めたことに間違いはない。経済面では順調に見えた「アベノミクス」が4月の消費増税で腰折れし、結局、15年10月からの再増税を1年半先延ばしする決断をして、12月の総選挙になだれ込んだ。結果は、与党である自民・公明両党が圧勝し、アベノミクスを信認した形となった。

日中、日韓の関係は大きく打開されない <br />原油価格は低迷し、ロシアの孤立感は深まる<br />――田中 均・日本総合研究所国際戦略研究所理事長たなか・ひとし
日本総合研究所国際戦略研究所理事長。1947年生まれ。京都府出身。京都大学法学部卒業。株式会社日本総合研究所国際戦略研究所理事長、公益財団法人日本国際交流センターシニアフェロー、東京大学公共政策大学院客員教授。1969年外務省入省。北米局北米第一課首席事務官、北米局北米第二課長、アジア局北東アジア課長、北米局審議官、経済局長、アジア大洋州局長、外務審議官(政治担当)などを歴任。小泉政権では2002年に首相訪朝を実現させる。外交・安全保障、政治、経済に広く精通し、政策通の論客として知られる

さて、来る15年は戦後70年の節目でもある。増税再々延期という選択肢を断ったアベノミクスはまさに正念場を迎える。集団的自衛権ではいよいよ関連法の改正が行われ、具体的な姿が浮かび上がってくるはずだ。わが国のエネルギー構成をどうするかも決めなければならない。安倍・習会談で関係改善の糸口をつかんだ日中関係はどうなるのか。世界情勢を見れば、原油価格の暴落が暗い影を投げかけている。平和でやさしいイメージの未(羊)年とは打って変わって、課題山積。そこで著名な経営者、識者の方々にアンケートをお願いし、新年を予想する上で、キーとなる5つのポイントを挙げてもらった。今回は、田中均・日本総合研究所国際戦略研究所理事長の見通しを紹介しよう。

(1)TPPは最終的妥結に向けた調整が行われる

 共和党が多数を占めた米国議会で貿易促進権限法案が成立し、TPPを最終妥結に導く交渉が行われる可能性が高い。共和党の圧力が高まり日本はいっそうの譲歩を求められる可能性は残っているが、TPPは日本の成長戦略の観点からも必須であり、最終的には夏前にも妥結に向けた調整がされよう。

(2)北朝鮮情勢は緊迫する

 北朝鮮の人権決議、ソニーエンタテインメントに対するサイバー攻撃問題などに絡み、国際社会と北朝鮮の関係はさらに緊迫する。