日本経済復活のカギを「内需」に定めた民主党。しかし、景気回復のビジョンがはっきり見えてこない現状で、「二番底」に陥る可能性も濃厚だ。日本経済のこうした危機的状況に警鐘を鳴らす経済ジャーナリスト・財部誠一氏に「二番底」突入の時期と「内需拡大」を推す民主党の思惑について話を聞いた。(聞き手/ダイヤモンド・オンライン 林 恭子、撮影/宇佐見利明)

民主党の内需拡大政策は
経済成長につながらない!

――底を打ったはずの日本経済に「二番底」が懸念されている。鳩山政権が掲げる内需拡大政策によって、日本経済回復のシナリオは成り立つのだろうか?

財部誠一
たからべ・せいいち/経済ジャーナリスト。1956年生まれ。慶應義塾大学法学部卒業後、野村證券に入社。同社退社後、3年間の出版社勤務を経てフリーランスジャーナリストに。金融、経済誌に多く寄稿し、気鋭のジャーナリストとして期待される。テレビ朝日系の情報番組『サンデープロジェクト』等、TVやラジオでも活躍中。経済政策シンクタンク「ハーベイロード・ジャパン」を主宰。

 まず言っておこう。民主党のマニフェストにある「子ども手当」や「高速道路無料化」などの内需拡大政策は、経済成長を目的としたものではない。彼らの最大の目的は、旧自民党政権下で出来上がった「政官業の癒着」に伴う国の非効率を壊すことである。それは、一見バラマキに見える政策のすべてが「直接給付」であることからも一目瞭然だ。

 「直接給付」は、これまで「政官業の癒着」によって硬直化してきた予算編成をすべて壊そうという、非常に優れた考え方ではある。ただし、これには決定的な問題がある。それは、民主党の議員たちが「この政策によって経済成長が促される」と唱えている点だ。経済成長どころか、経済回復のシナリオさえ全く見えてこないにも関わらず、である。

 彼らが掲げる「内需拡大」のストーリーはこうだ。国のムダをなくし、直接国民に補助金などを給付することによって、可処分所得が増え、消費は高まり、経済が成長するという論法である。しかし、この厳しいご時世に、子ども手当てをすぐに全額使ってしまう人はいるだろうか。相当額を貯金すると考えるのが、常識的な判断だろう。

 私は無駄な公共事業に反対だが、公共事業でさえ5兆円支出すれば5兆円の費用対効果が見込める。ところが、子ども手当の場合は間違いなく効果はマイナスになり、費用対効果という点でも景気対策としては悲観せざるを得ない。

 これは高速道路無料化についても同様だ。世界でも特殊な物流事情や東京一極集中の日本において、段階的に高速道路を無料化していく政策によって物流が劇的に改善されることはない。したがって、物流コストが下がることで可処分所得が増え、景気が回復するというのは幻想以外の何者でもない。