「マウントゴックスの破綻は、確かに衝撃だったが、それは新しい業界にはつきもので、そういうことも起こる。依然としてシリコンバレーではビットコインに対する注目度は高い」

 そう語るのは、ネイサン・ペイサー氏。Venture Scannerのビットコイン担当アナリストを務めている。

Venture Scanner」はシリコンバレーを拠点に、ベンチャー企業に対するコンサルティングや育成をするNSV(NetService Ventures)の提供する投資家、金融関係者、事業者向けのスタートアップ情報を提供するウェブサービス。同サイトでフォローするビットコインに関係する企業は578社で、ビットコインウォレットやビットコインインフラストラクチャーなど、12のカテゴリーに分けられている。

 今回紹介する2社はいずれもビットコインでビジネスをするスタートアップで、1社目はインターネット上で物やサービスを販売する小売り業者などに、ビットコインでの支払いを可能にするアプリケーションを展開する「ビットペイ(BitPay)」。2社目は、世界中のビットコインで支払いをする人たちの取引ログ(台帳、もしくは帳簿のようなもので「ブロックチェーン」と呼ばれる)を拡張させるシステムを開発している「ブロックストリーム(Blockstream)だ。

 マウントゴックスの破綻によって、日本ではビットコインに関してメディアではほとんど見かけなくなった。「すでに終わったもの」として片付けられつつあるように思えるが、世界ではまだまだ注目を集めている。

 2社の特徴を解説する前に、まずはビットコインに関して簡単におさらいしておこう。

国や中央銀行に影響されない
ネット上の仮想通貨「ビットコイン」

 ビットコインはインターネット上で使用される通貨。2009年にナカモトサトシという謎の人物の論文に基づいて構築、運用され始めた仮想通貨だ。ビットコインで買い物をするときは、英文字や数字を組み合わせた支払先のアドレスに、自分が開設したビットコイン口座から送金する。すべてのプロセスはインターネット上で行われる。

 普段私たちが物やサービスを購入する為に使っている通貨は、国という枠組みのなかで運用されている。日本であれば円だし、米国であれば米ドル。ビットコインは、この国という枠組みとはいっさい関係ない。つまり、ビットコインは各国の中央銀行の政策や経済状況に依存していないのだ。