米大統領・議会選挙での圧倒的な勝利に酔って、経済対策での大盤振る舞いを目論むオバマ次期政権と民主党。先の見えない金融機関への公的支援。そして、拡大を迫られるゼネラル・モーターズなど自動車産業のビッグ・スリーの救済――。

 とどまるところを知らない増額圧力が響いて、当初は2000億ドル(20兆円)程度と見込まれていたオバマ次期政権の経済対策の真水の規模が、ここにきて「最低でも3000億ドル(30兆円)。いや、5000億ドル(50兆円)ぐらいに膨らむかもしれない」(米金融機関のエコノミスト)との観測が強まってきた。

 この結果、懸念せざるを得ない事態に至ったのが、米ドルがどこまで通貨としての信任を維持できるかという命題だ。衰えたとはいえ、機軸通貨の座にある米ドルへの急激な信任低下は、世界規模で経済の混乱を加速しかねない厄介な問題だ。

 日本政府に、どこまで、そうした自覚があるのか不明だが、我らが政府は14日から始まる国際金融サミットで、日本や中国の虎の子の外貨準備を惜しげもなく投入しIMF(国際通貨基金)の途上国向けの緊急融資制度の充実を図る計画を提案するという。

 だが、今、世界で最も巨額の資金を必要としているのは途上国ではない。それは、米国なのである。むしろ、その巨大な歳入ニーズをどう賄うか。これが、今回の世界的な経済危機を克服するうえで、最大かつ喫緊の課題に浮上してきた。

金融機関への公的資金投入が
各国の財政危機に陥れる

 「(IMFから借り入れる21億ドルも含めて)少なくとも60億ドルの緊急支援が早急に必要だ」――。

 アイスランドのゲイル・ハーデ首相は再三、同国の窮状を訴えてきた。同国にも波及した金融恐慌対策として、まず9月末に同国大手のグリトニル銀行の発行済み株式の75%を取得して、国有化する方針を発表。さらに10月に入って、すべての銀行を政府の管理下に置く非常事態宣言を行い、必要な法律も制定させた。しかし、難問が残った。同国にとって、民間銀行、それもGDP(国内総生産)の何倍もの規模に達する負債を抱える民間銀行を国有化することは、お金の面で財政危機に直結する大きな問題だったのだ。

 ハーデ首相は、ロシアやIMFに資金援助を要請した。だが、事態は遅々として進まない。英国やオランダの反対に遭って、11月初旬に実行される予定だったIMFの緊急融資が、今なお滞ったままという。