現在始まりつつある2016年度新卒採用から、大きく採用スケジュールが変わるのは皆さん、ご承知の通りです。12月就職活動解禁であった昨年であれば、すでに就職サイトがオープンされ、数多くの合同説明会や企業セミナーが開催されていた時期ですが、今年は学生の動きの鈍さにしびれを切らす大学関係者の声を多く聞きます。

世間ではスケジュールが「変わった」ということばかりが注目されていますが、採用スケジュールを企業側が変えることによって、就職活動・採用活動に関する問題が解決するという“幻想”を一部の大人が抱き続けていることは、どうも変わっていないようです。

実はこの「変わらない」方にこそ、着目する必要があるのではないでしょうか。


採用スケジュールの議論と
早く決別しよう

 私たちは、新卒採用を考えるとき、「スケジュール論で問題が解決する」という、この大きな勘違いと早く決別しなくてはいけません。

 今年の新卒採用の最大の課題は、スケジュールが変わったことではなく、「スケジュールを変えさえすれば世の中を変えられる」という幻想と欺瞞が、いまだに渦巻いていることです。

 また、1人ひとりの採用担当者がどうそれにチャレンジしていくか、ということです。

 おそらく今回のスケジュールの見直しに対し、就職活動の問題が解決すると喝采を浴びせている採用担当者は、そういないと思います。

 ここで採用活動に関する歴史を少し、ひもといて見れば、企業と大学の就職スケジュールに関する協定的なものの歴史は、なんと1928年にまでさかのぼることができるそうです。

 就職難によって過熱化した学生の就職活動による学問の環境への悪影響が問題となり、大手企業と有名大学が結んだある種の紳士協定がそのはじめとのこと。

 既にこの時期からマニュアル通りの受け答えをする学生に苦言を呈する人事担当者のコメントが残されていたり、「就職戦術」なるハウツー本も出ていたりしたというのだから、この80年以上もの間、どうも歴史はあまり変わってはいないようですね。

 そして1953年には、文部省・大学・経済界の申し合わせにより就職協定の原型ができ、いったん1996年に、協定破りが横行したため協定が廃止されましたが、翌1997年には「倫理憲章」の名前で復活。

 その後もいろいろと名称は変わっているものの、活動開始時期、選考開始時期、内定開始時期を決めるスケジュール制御による解決ができるという幻想は続いており、今回にいたっては内閣総理大臣が経済界に要請をするという、国を挙げての「変わらなさ」に、また学生は翻弄されています。