業界史上最年少上場、そして破綻からの再生を描いた『30歳で400億円の負債を抱えた僕が、もう一度、起業を決意した理由』の著者である起業家・杉本宏之氏が、本書にも登場する経営者たちと語り合う必読のシリーズ企画。第5回は同世代の起業家として公私ともに親しい『ドリコム』のCEOである内藤裕紀氏の登場だ。プライベートの親友でもある二人の打ち解けたやりとりで、後編はさらに盛り上がる。(構成・寄本好則 写真・寺川真嗣)

先輩との付き合いは、
ずっと苦手だった

杉本 今、ドリコムの本社があるこのビルは、僕が『エスグラント』の本社を置いていた場所でもあるんですよ。久しぶりに来ましたけど、ドリコムの本社は受付フロアにカフェがあったりして、いい雰囲気だね。

内藤 デザイナーやエンジニアといったクリエイター系の社員が多いからですかね。社内の雰囲気がそもそもフランクなんですよ。社長室みたいな部屋もないですし、僕と社員の関係もわりとフラットです。

起業家対談シリーズ第4回 内藤裕紀<br />孤独にサービスをつくり続け、人付き合いに無関心すぎた杉本宏之(すぎもと・ひろゆき)[起業家] 1977年生まれ。高校卒業後、住宅販売会社に就職、22歳でトップ営業となる。2001年に退社し、24歳でエスグラントコーポレーションを設立。ワンルームマンションの分譲事業を皮切りに事業を拡大し、総合不動産企業に成長させる。2005年不動産業界史上最年少で上場を果たす。2008年のリーマンショックで業績が悪化、2009年に民事再生を申請、自己破産。その後再起し、エスグラントに匹敵する規模にグループを育て上げた。2014年7月、復活を果たしたのを機に著書『30歳で400億円の負債を抱えた僕が、もう一度、起業を決意した理由』を刊行した。

杉本 なるほど。うちの会社は僕の気風もあって、どちらかというと体育会的な規律正しさを求めますからね。

内藤 うちでもし体育会的なことをやってしまうと、社員の大多数が辞めちゃうでしょうね(笑)。そういえば、杉ちゃんは先輩の扱いが上手ですよね。同世代の中では圧倒的に先輩に気に入られている感じ。やっぱり、体育会的な経験がものをいうのかな。

杉本 いやいや。

内藤 だってIT業界の先輩経営者がずらりと揃っている飲み会で、なぜか不動産業界の杉ちゃんが呼ばれてる。「なんで杉ちゃんがここにいるんだろう」って、いつも不思議なんだよね。

杉本 なぜか呼んでいただけるのはありがたいことです。たとえば藤田さんから夜中の2時くらいに電話が掛かってきて「グリーの田中君と一緒なんだけど、杉本君がいたほうが盛り上がるからすぐにおいでよ」と呼び出されるようなことが多いかな。

内藤 僕は先輩とのお付き合いが得意じゃないから、教えてほしいくらいですよ。

杉本 まあね、先輩との飲み会で真っ先に寝ちゃってるのが内藤さんだったりしますから。僕が上手っていうよりも、内藤さんが自由奔放過ぎるんじゃない?

内藤 会社を立ち上げたのも京都で、ずっと孤独に自分たちのサービスを作ってきましたからね。たしかに先輩経営者とか、銀行さんとかの付き合いには無頓着でした。