マーケティング部門やIT部門で「プロジェクト」という言葉を使うことがあると思うが、今回は、日本政府も最近使い出した「プログラム」という観点からの失敗研究を考察してみよう。

バタバタ仕事があたりまえ?

 デジタルマーケティングの領域でプロジェクトマネジメントという概念、あるいは具体的な手法が取り入れられたのは最近のことである。それまでは、サイト制作やキャンペーンは、納期はあるがバタバタした仕事で、管理技術などもなく、割り込みもあたりまえという雰囲気が蔓延していた(今もそうかも知れないが)。

 そんなデジタルマーケティング領域にプロジェクトマネジメントを持ち込み、管理技術(PMBOK)の必要性を知らしめた(「0を1」にした)「Webプロジェクトマネジメント標準 PMBOK(R)でワンランク上のWebディレクションを目指す」という本がある。この本によりPMBOKを知ったマーケッターも多く、まさにデジタルマーケティング業界を「ワンランク上」に引き上げてくれた良著だ。

不易な管理技術と流行の固有技術

 IT系の開発会社全般にいえることだが、固有技術を技術と考えている経営者が多い。

 固有技術はデジタルマーケティング系開発会社であれば、クラウド、オム二チャネル、マーケティングオートメーション(MA)、特定製品などの実装技術を指す。これらが強いとユーザーから見ると安心感が得られるわけだが、固有技術そのものは時の経過とともに一般化し、差はなくなってくる。

 すると目新しいテクノロジーが出現するので、IT企業は新しい固有技術としてそれを取り込む。この連鎖が続いているので、IT系の開発会社は固有技術を売り(コアコンピタンス)にしているところが多い。

 しかし、ITの場合、固有技術は流行であり、1980年代の固有技術のBasic言語、1990年代の固有技術のインターネット、 そして2000年代の固有技術へと変化するものだ。

 反面、経営資源(人・物・金・情報)を有効利用する管理技術は、変化の少ない不易なものだ。製造業であれば、時間・作業・動作・ムダを改善するIE(Industrial Engineering)、不良をなくすQC(Quality Control)、最適化のOR(Operations Research)、機能分析と価値向上のVE(Value Engineering)などが管理技術だ。

 管理技術は機会損出を最小にして、利益を最大化するものだが、ITの管理技術は前述の「Webプロジェクトマネジメント標準」が示してくれたプロジェクトマネジメントではないだろうか。

 プロジェクトマネジメントなどの管理技術のない協力会社に発注することは、バタバタ仕事から失敗プロジェクトを産む可能性が高いことはここで書くまでもないが、デジタルマーケティングのニードに適応していない管理技術をビルトインしている協力会社に発注することもリスクが高い。

 では、デジタルマーケティングで失敗を誘発しにくい管理技術とは何だろう。