この連載では以前、「参院民主党与党化現象」を指摘した(第4回)。政権交代が現実味を帯びてくる中で、政治と官僚の関係が変化している。特に、霞が関の官僚は民主党が政権獲得後実行に移すとされている、首相が各省庁の主要幹部を任命する「政治任用制」に戦々恐々としている。

 政策立案過程から「官僚支配」を排除することは日本政治の長年の課題である。今回は、それに対する回答である自民党の「首相官邸主導体制」と民主党の「政治任用制」を批判的に紹介し、私の代替案を提示してみたい。

「首相官邸主導体制」の欠陥とは

 橋本内閣の省庁再編で総理府、経済企画庁などが合併して「内閣府」が誕生し、その内閣府と組織的には表裏一体の関係にある「内閣官房」のスタッフが強化された。その結果、首相は政策立案の事務局を持ち、独自に法律を作成できるようになった。また、省庁間で対立のある案件の調整を首相官邸がより効果的に行えるようになった。これが首相官邸主導体制である。

 「首相官邸主導」は、郵政民営化など小泉構造改革を象徴する政策を実現させた反面、官僚による抵抗を抑えられないことも多かった。例えば、2004年6月に成立した年金改革法は抜本的な改革には程遠かったと批判されることが多い。

 当時、経済財政諮問会議にいた太田弘子氏は著書で、2002年12月に厚労省から諮問会議に改革のたたき台が出された時点で、制度の抜本改革が却下されており、「社会保険方式に基づく現行の制度体系を基本として改革を進めていく」と決めつけられていたことを問題視している。つまり、抜本的改革が実現しなかったのは、それを望まない厚労省がたたき台に載せなかったので、諮問会議で議論のしようがなかったからである。太田氏は、制度の抜本的改革を実現するためには、諮問会議で審議する前に厚生省の審議会「社会保障審議会年金部会」でそれを議題として取り上げておかなければならなかったと指摘している。