2016年新卒採用がスタートした。今年度より3月1日に採用広報活動が解禁となり、8月1日から選考がスタートする新しいスケジュールとなる。

新卒一括採用の弊害はかねてから喧伝され、さまざまな批判もあるが、それでも続いているのは採用する企業にとって合理性があるからだ。

その背景には日本型経営の特質である「能力平等主義」と「年功序列的な人の結びつき」がある、と筆者は指摘する。長期雇用を前提に、「働く仲間」を求める企業のニーズに、新卒一括採用という仕組みは合致しているのである。

新卒一括採用は
なぜ続いているのか?

 いよいよこの3月から大学3年生に対する採用情報や説明会情報が解禁となって、8月の選考開始に向けてのスタートが切られた。

 このように企業が在学中の学生を対象に毎年リクルート活動を行い、卒業直後の4月にまとめて採用するという方式を新卒一括採用と呼んでいる。学生の会社訪問の様子は、例年マスコミにも取り上げられるので知らない人はいないだろう。

 しかし連載第1回でも述べたように、ある商社の人事担当者が、イタリア人のビジネスパーソンに、日本の新卒一括採用について説明したところ「まだ働いてもいない学生をなぜ採用するのか。信じられない」という反応が返ってきたというのである。

 契約の観点から見れば、実際にどれくらいの業務能力があるかも分からない学生と雇用の約束(内定)を結ぶのは奇妙に思えるのだろう。この方式は世界標準ではなく、日本独特のユニークな制度なのである。

 採用活動が始まる時期になると、この新卒一括採用が話題に上る。また、従来からいろいろな批判が指摘されている。

 学生のチャンスを一回限りとして敗者復活を認めないとか、世の中の景気変動やその年の経営環境によって左右されすぎるとか、早期化、長期化した採用活動が学業を阻害している、採用側は、学生の学力を見ようとしていないなどである。

 また余剰の中高年社員を生み出す原因にもなっているので、欧米のように補充採用中心に変更するという考え方もあるだろう。
しかしこれだけいろいろな批判などが飛び交いながらも、依然として日本の多くの会社は、新卒一括採用を手放していない。これは、会社を運営していくのにそれなりのメリットがあるからであろう。