「日本の不動産業界は、公平性で米国から100年は遅れている」。ある中堅不動産業者の首脳は、断言する。特にこの首脳が問題視するのが「両手仲介」だ。

 両手仲介とは、自社の顧客である売り手の物件を、自社の顧客の買い手に仲介することだ(図参照)。

 日本では宅建業法により、不動産の仲介では売り手と買い手から得る手数料はそれぞれ3%が上限とされている。

 そのため、例えば不動産業者A社の顧客である売り手の物件を、B社の顧客の買い手が購入すれば、A社とB社には売却金額の3%ずつしか入らない。

 しかし、一度の取引で売り手と買い手、双方がA社の顧客であるならば、6%の手数料が懐に入ってくる。これが両手仲介だ。

 もちろん、両手仲介が絶対に悪いとはいえない。大手不動産業者のメリットは多くの顧客を抱えていることであり、それを生かすことで、素早く売却に結び付く側面もあるからだ。

 そうはいっても、不動産業界関係者の多くが、実は、売り手にとってデメリットが多いことを知っているのだ。

 両手仲介のデメリットは不動産業者が買い手の側に立ったり、契約数を稼ごうとしたりして、成約価格が下がる傾向にあることだ。

「手数料が6%もらえるのなら、成約価格が高い方がいいのでは」と思うかもしれない。しかし、不動産業者の営業マンの成績は“数”が重要だ。契約の数が給与に直結している会社もある。