持っているだけの土地や、変形地・狭小地だからといって放置したままでは、税金が掛かるだけの不良資産にすぎない。とはいえ、土地を有効活用するには、初期投資が必要で、簡単にやり直しもできない。成功するには、まずは目的を明確にすること。税務対策として、また長期的に安定した収入を目指して、最大限効果を挙げる土地活用とは——。

 土地資産は生かしてこそ次世代に継承できる──。これが相続における基本原則だ。

 不動産の相続では、宅地ならば「路線価方式」か「倍率方式」、家屋なら固定資産税評価額を基準に評価される。路線価方式とは国土交通省が毎年公表する1月1日現在の土地価格をベースに評価するもので、一方、倍率方式は路線価のない土地に対して土地の固定資産税評価額に国税局長が地域ごとに定めた倍率(毎年改定)を乗じたものだ。

小規模宅地特例の
メリットを生かす

 土地の相続でまず留意しておくべきなのが「小規模宅地の特例制度」である。

 被相続人が居住していた宅地の場合、330平方メートルまでは評価額が80%減額される(2015年1月1日以降の相続の場合)。また、玄関が別々にあるような独立型の二世帯住宅でも小規模宅地の特例が認められることになった。

 かつては相続人が同居していても、相続発生時点で親が介護施設などに入所している場合は別居扱いとなり、小規模宅地の特例は適用できなかったが、現在は介護施設に入所していても自宅を貸していなければ特例が認められている。

 つまり、二世帯住宅で、親を介護施設に入所させざるを得なくなったとしても、小規模宅地の特例制度を活用でき、二世帯住宅による土地相続がメリットの多い選択肢になった。

住宅と賃貸を併設して
節税効果を高める

 宅地を賃貸事業用とする選択肢もある。所有する土地を賃貸事業用とした場合、次のようなメリットがある。

(1)土地の評価額は「貸家建付地」として評価され、時価のほぼ80%になる。
(2)賃貸用の建物は、固定資産税評価額に借家権割合と賃貸割合を乗じた価額を、固定資産税評価額から減額される。
(3)賃貸事業の宅地についても小規模宅地の特例制度があり、200平方メートルまでならば評価額が50%減額される。
(4)賃貸物件を建築するための借入金は、負債として財産評価から差し引くことができる。

 つまり二世帯住宅で、かつ賃貸も併設している場合の節税効果が高くなる。所有する土地や資金の状況、現預金や有価証券の相続額などを総合的に勘案することで、相続人の負担を減らした相続メニューを検討しやすくなっている。

 ただし、メリットを享受するには、幾つかの制限事項があることにも注意したい。例えば、賃貸事業の場合、建築費の返済を終えて、全室が空き家という場合は更地評価になり節税効果はない。居住用宅地に小規模宅地の特例を利用する際にも、相続税の申告までに遺産分割を確定しておく必要がある。

 土地資産の相続手法は多様化しておりメリットも多いからこそ、専門家のアドバイスを得ながら活用していくことが有効だろう。