大学ゼミ同期の岸井成格と共に久しぶりに阿川佐和子と会ったとき、檀ふみも一緒だった。ずいぶん前の話だが、二人とも慶応の後輩で、背の高い檀の方が背の低い阿川より年下である。その後、大分県知事だった平松守彦が上京するたびに集まる小さな会で会い、私がホストの『俳句界』の対談に出てもらった。2006年初夏のことである。

「女心を知り尽くしていらっしゃるんですね」

 のっけから檀はからかい口調だった。

「女性と話すときに全然緊張とかなさらないでしょう……」

 思いもよらぬジャブを食らって、「女姉妹の真ん中で育ちましたから」と返すのが精一杯。

 “辛口評論家”とか呼ばれて恐がる人が多いのに、何度か会っているとはいえ、彼女には微塵もそんな気配はない。

「まあ、女心を知り尽くしていらっしゃるんですね。モテますでしょう」と二の矢を放たれて、私は早々に受け身にまわっていた。「全然、男性でモテるといえば伊集院静」と躱(かわ)したつもりだったが、檀は伊集院の「別れの夜湯豆腐だけが音を立て」という句を紹介し、「あやうい男女の別れの句。こんなご経験がおありなのでは?」と突っ込んでくる。

「ないですよ!」とムキになって否定すると、「ホントかしら?」と揶揄する。「こんな句を詠んで“さま”になるのは伊集院静だけ。私などは、なるべく誠実に“こと”を運ぶ以外ない(笑)。だからモテる男に反感を抱く」と居直ったが、すでにして敗色濃厚である。