「広告が効かない」時代にすべきこと<br />『脱広告・超PR』の編集者が語る
『脱広告・超PR―広告を信じなくなった消費者を動かす「連鎖型」IMC』山田まさる[著]定価1680円(税込)

 書籍づくりをしていると、自社で打つ宣伝広告より読者の口コミのほうがはるかに売上げに寄与する、という現象にしばしば遭遇します。売れる本は出版社が必死に動かなくても売れるし、売れないものはどれだけ販促しても売れません。とりわけブログが普及して以降、この傾向はますます強まっています。

 考えてみれば当たり前のことのようにも思えます。作り手が「この本がいい」というのは当然で、読んだ人が「この本はいい」という声のほうがはるかにリアルな説得力があります。僕らが読者として買う本を選ぶときなど、読んだ人の感想に左右される割合はかなり大きいものです。

 本書のテーマは、こんな経験のある僕ら出版人にとっては、実に腑に落ちる話です。「広告が効かない」という悩みは、出版業界だけでなく、あらゆる業界の問題のようです。以前のように膨大な広告量を投入すれば、それなりの売上げが確保されたというのは、遠い昔の話になったようです。

 そこで著者の山田まさるさんは、「情報の連鎖をつくる発想を」と主張します。企業が一方的に自社宣伝を行っても、それは連鎖ではありません。選挙活動でお馴染みの拡声器による伝達ですが、この効果自体が怪しくなっているのです。企業が最初に宣伝として自社製品を言い出したとしても、その情報が次から次へと広まる連鎖の仕組みが重要となります。具体的には口コミやネットのブログなどになるのですが、情報の作り方からして、「連鎖」する仕組みを用意しましょうと著者は主張します。

 PR業界ではカリスマと言われる著者ですが、「ファイバー・デトックス」「逆チョコ」「夜カジ族」など、多くの実績をもとに、本書でも連鎖をつくるための実践方法を紹介していただいています。ここでは消費者のインサイトを見つける「洞察」のステップから、「説得」「拡声」「連鎖」という4つのステップで書かれており、どのステップにも適切な事例があることで、より「超PR」の展開がイメージしやすくなっています。

 本書のもう一つの面白さは、かといって広告やマスメディアの力を軽視していないところです。むしろ、ブログ等などで火をつけるうえでもマスメディアの力はまったく衰えていないと、その存在価値を高く評価されています。つまり、マスメディアによる広告宣伝と、連鎖の仕組みづくりが一体になって、人々の口の端にあがる情報連鎖が可能になるという主張です。このあたり、モノを売る側の一員としても、とても参考になりました。

(編集担当:岩佐文夫)


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