「せっかく、仕事にも慣れてきたのに……」と寂しげに語るのは、愛知県内のトヨタ系部品メーカーの工場に勤務していたある日系ブラジル人男性。10月に入り、突然、3年間勤めていた工場を解雇されたのだ。

 米国金融危機を発端とし、自動車関連や電機などの製造業の現場で、外国人労働者の解雇や契約の終了が目立つ。

 たとえば、外国人労働者の構成比が13.2%と、東京都に次いで多い愛知県の場合は顕著。名古屋外国人雇用サービスセンターは、10月以降、さながら風邪のシーズンの病院の待合室のような混雑ぶりだ。

  来所者数が昨年に比べ、2倍以上に増え、11月もさらに増加傾向にある。担当者は「10月は1日平均28.8件だった相談件数が11月は42.2件に、新規求職者数も10月の15.8人から26.3人に増えた」と説明する。

 愛知県下のハローワークでも、「4~10月の外国人の新規登録者の数は、316人と、前年同期の137人に比べ、急増している」(ハローワーク岡崎)。

 同じく、自動車関連産業が集積する静岡県では「10月の相談件数は635件と昨年の2.3倍」(ハローワーク浜松)。ハローワーク太田(群馬県)などでも「感覚として2倍に増えた」という。

 バブル崩壊後、国内製造業各社は非正規雇用者への依存度を高め、なかでも外国人労働者(合法就労者数)は工場労働の担い手として1996年の35人から2006年の75.5万人と、その数を増やしてきた。岐阜県美濃加茂市のように、自治体の人口の約1割が外国人という事例もある。

 生活弱者としての非正規雇用者の存在が社会問題として取り沙汰されるようになって久しいが、とりわけ外国人労働者は、本国から呼び寄せた家族の処遇などを含め、失業対策は容易ではない。

 また、治安悪化との関連も深い。彼らを安易に景気の調整弁とすることによって生まれる社会的な悪影響は計り知れない。

(『週刊ダイヤモンド』編集部 山本猛嗣)