このところの急激な景気悪化により、雇用情勢が極端に厳しいものになってきていますが、これが「うつ」等の事情で休職中の方々にとっても、強く焦りを生じさせることになってきている傾向があるようです(ダイヤモンド・オンライン「inside 第262回記事」参照)。

 そこで今回は、「復職」を急ぐ気持ちについて考えてみたいと思います。

焦ってなんか
いないのに!

 Yさんは大手メーカーの企画開発チームのリーダーですが、半年前から「うつ病」の診断で休職中です。

 当初はどうにも動けないくらいの状態でしたので、自宅療養も致し方ないと思って休養に専念する気持ちでいました。しかし、3ヵ月ほど経った頃から、抑うつ気分・意欲減退・疲労感・睡眠障害などの自覚症状が軽くなってきて、1日も早く職場復帰したいという気持ちが徐々に強まってきたのです。メンタルクリニックへの通院間隔も、状態が落ち着いてきたということで、毎週だったものが隔週で済むようになっていました。

 Yさんは、そろそろ「試し出社」ぐらいできそうだと強く思うようになり、休職も4ヵ月が過ぎた頃、思い切って主治医に復職への気持ちを話してみることにしました。すると、主治医からこんな答えが返ってきたのです。

 「確かに、状態は確実に良くなってきてはいます。でも、まだ復職のことを考えるのは早いと思います。会社のことを今は考えずに、もうしばらく自宅療養を続けた方がいいと思いますよ」

 これを聞いたYさんは、納得がいきません。

 「もう十分元気になっていますし、出社できる自信もあります。家でゴロゴロしている方が、私にはかえってストレスなんです。私がいなければ進まないプロジェクトもありますし……。もうしばらくって、いったいあとどれくらいなんでしょう?」

 「今はまだ、Yさんは焦っている感じがします。その焦りがなくなったらということです」

 「全然、焦ってなんかいないつもりなんですが……」

 結局、この時点では主治医から復職の許可がもらえず、Yさんは今でも自宅療養を継続しています。しかし、主治医に言われたような「焦り」が自分にあるとは感じられないので、今でもYさんは、どこか釈然としない気持ちが続いています。

「焦り」という説明では
伝わらないこと

 このYさんのケースに限らず、復職の時期をどう見極めるかということは、医師側の見立てと患者さん自身の気持ちとが食い違いを生じやすく、治療の流れの中でも難しいポイントの1つです。

 このYさんの主治医のように、「焦り」というキーワードで「復職が時期尚早であること」を説明されるのが、一般的にも多いのではないかと思われます。