『森のイスキア』主宰・佐藤初女氏のところへは、女優・大竹しのぶさんや、総理大臣夫人・安倍昭恵さんなど数多くの有名人が「おむすび」を学びにくる。
また、全国から自殺寸前の人がやってきてそこで「食」をもてなされると活力を得て帰っていく。まさに「ふるさと」のような地が青森・岩木山麓にある『森のイスキア』だ。
1995年公開、龍村仁監督『地球交響曲<ガイアシンフォニー>第二番』でその活躍が世界中で注目された佐藤初女氏。現在も精力的に講演活動中だ。
その初女さんが93歳の集大成書籍『限りなく透明に凜として生きる―「日本のマザー・テレサ」が明かす幸せの光―』を出版(本記事巻末に購入者限定特典あり)。
 本書の中で“宗教と限りなく透明”について語り合った晴佐久昌英神父の4月17日出版記念講演会でのスピーチを一部、ご紹介する 。

突然、送られてきた10個のおむすび

 もう20年も前のことになりますが、わたしが初女さんとお会いしたときのことをお話しさせてください。

 当時、わたしは映画評論というのをやっており、日本カトリック映画賞というのを選考しておりました。『地球交響曲(ガイアシンフォニー)第二番』という映画を観て、そこで初めて佐藤初女さんという方を拝見しました。

 そのおむすびのおいしそうな映像に胸をうたれまして、
 「なんて包み込むようなすばらしいおむすびだろう、あんなおいしそうなおむすびをわたしは食べてみたい」
 という率直な気持ちを選評に書きました。

 それを初女さんは見てくださっていたのですね。
 ちょうどそのころ、わたしは大きな病気をし、手術をして、辛い気持ちでしょげていました。

 そんな、ある日突然、わたしの教会にクール宅急便が届きました。
 差出人は「佐藤初女」。
 一瞬どなたかわからなかったのですが、包みを開けてみると、籠にタオルでくるまれたおむすびが10個。
 見た瞬間に初女さんだと、すぐにわかりました。おいしかったし、目頭が熱くなった。

 このとき、わたしと初女さんはまったく面識がありません。
 でも、あのおむすびを食べたいといった神父が病気だと聞いて、ちょっとしょげているだろうなと慮って10個のおむすびを握って宅急便で送る……なかなかできることではありません。

 わたしは、その気持ちがおいしかったというか、すごくホッとしたというか、この方にほんとうに会いたいと思い、その後、初女さんに会いに『森のイスキア』へ行きました。