前回に引き続き、法科大学院の話である。

 社会人が働きながら通える法科大学院が「数校ある」と前回では書いた。そのひとつが、今回紹介する「筑波大学の夜間社会人法科大学院」である。わざわざかぎ括弧でくくったのには意味があり、この学校は「東京にある筑波大学大学院」のほうだからである。

 経緯をざっとおさらいしておくと、筑波大学の前身は東京教育大学であり、もともと東京にあった。それが、つくば研究学園都市に移ったのである(本当はもう少し複雑なのだが、はしょらせてもらおう)。その一方で筑波大学は、東京の旧校舎などを拠点に、社会人のための大学院を運営して現在に至っている。夜間大学院のはしりであり、社会人のための大学院の草分けだ。その現在進行形が、東京の、夜間の、社会人のための、法科大学院なのである。

利便性もよく学費も安い
由緒あるロースクール

 正確な名称は、筑波大学大学院ビジネス科学研究科法曹専攻。ひらたく解題すれば、社会人のための都内国立ロースクールである。便利で由緒があり、名前もよく学費も安い。有職ビジネスマンにはうってつけである。

 そして、場所がいい。筑波大学の言い方に従えば「東京キャンパス(秋葉原地区)」は、JR秋葉原駅から徒歩3分の秋葉原ダイビル14~15階にある。山手線圏内とその周辺、つくばエクスプレスなどでも通える範囲内。事実上のサテライトキャンパスといっていいだろう。

 国立大学法人が、どうしてここまでサービスがいいのか。理由はともあれ、筑波の大学院の、これは伝統である。かつては「企業法学」専攻の大学院を夜間大学院として設置した、社会人の高等教育の先駆者。このロースクールも「多様なキャリアを持った法曹人の養成、そして社会人のキャリア転換志望という社会的需要に応える」ことを掲げている。

 カリキュラム編成も手馴れたもので、3学期制(授業期間:4月~7月、8月~11月、12月~3月)を採り、このほかに集中講義も行なわれる。細かく単位を積み上げやすいトリメスターと、いざとなれば一気に挽回する集中講義。なかなか通学しにくい、社会人のウィークポイントを克服するため、単位の蓄積がしやすい仕掛けが怠りない。ホスピタリティに溢れた、絶妙のカリキュラム編成である。

 問題は入試が難関であることだが、これは如何ともし難い。しかし、かつての司法試験浪人に比べたら、“有職のまま”の法科大学院受験生ははるかに恵まれている。法科大学院浪人になっても、現在の職業はキープできているのである。

 ある種、医学部に転身する社会人の行き様と似ているのは、受かってから本気で考えればいい点だ。レベルが高い分、入学試験に受かることが、最終的な司法試験合格の確率を占うことにもなる。

筑波大学法科大学院