質疑応答の下手な会社は8割?

「いい質問」ができる人は出世する多くの人が集まる講演やスピーチなどの場では、質問力が問われている

 私は、かなりの長期間にわたり、社長が自社の社員などに対して行うスピーチ原稿を書くということを仕事の一つとしてきた。スピーチは事前にしっかりと打ち合わせができて、話の練習をする時間さえ取れれば、それなりのものにはなる。しかしながら、スピーチの後にある社員からの質問タイムはとても怖い。どんなことになるか、その内容をコントロールできないからだ。

 質問タイムはすごく重要である。良質な質疑応答が行われると、話の内容の理解が深まるだけでなく、そこに居る人たちに幸せな未来の予感が生まれ、個々人に具体的に明日から何をやればよいかのイメージが形成される。そして、一体感が生まれて、組織の士気が大幅に向上する。こうなれば、スピーチは大成功したといえるだろう。

 一方、さして重要ではないところに話が展開したり、ごく一部の人しか関係のない細部の確認のような質問が続くと、ムードが大幅に盛り下がってしまう。良いスピーチの印象も極めて薄くなってしまう。

 そこで仕方なく、(許される場であれば)良い質問をするであろうと思われる仕込み(サクラ)の質問者を指名しておくこともあるのだが、いろいろな場数を踏んでみると、サクラの用意などまったく考える必要がないほど質問がうまい人たちが多い会社と、拙い人ばかりの会社があることに気付く。比率的には2:8くらいかもしれない。もちろんうまい人が多い会社のほうが2である。

 うまい人が多い会社では、本編のスピーチでは時間の関係などで触れることのできなかった重要なポイント、たとえば、「Bという意思決定でもあり得たのだが、なぜAを選択したのか?」「スピーチの中で触れられていた新しいコンセプトを実現した事例として、私は○○のようなことを体験したのだが、こういう仕事こそ、社長の求めているものか?」などといったような、内容を補足し、さらに骨格を際立たせるような質問が飛び出してくる。