ネクスト・ソサエティ
ダイヤモンド社刊 2200円(税別)

 「先進国の政府のうち、今日まともに機能しているものは1つもない。米、英、仏、独、日のいずれにおいても、国民は政府を尊敬していない。信頼もしていない」(『ネクスト・ソサエティ』)

 あらゆる国で問題が発生し、その解決に政治家のリーダーシップを求める声が聞かれる。だが、それは間違った声である。問題が起こっているのは、人に問題があるからではない。ドラッカーは「システムに問題が生じたのだ」という。

 今日の政府は400年前にかたちができた。16世紀末に登場した国民国家とその政府は、当時最高のイノベーションだった。事実、このかたちは200年で世界中に広まった。

 ところが19世紀の後半、社会の力によって社会を救うという何種類かのイズムが広がり、揚げ句の果てに、政府は万能だということにされてしまった。

 しかし政府には、できることとできないことがある。特に現場の仕事が恐ろしく苦手である。

 1969年、「再民間化」のコンセプトの下に、政府現業部門の民営化を最初に唱えたのが、ドラッカーだった。これを英国の保守党がドラッカー教授の提案と断ったうえで、政策綱領に織り込んだ。

 それから30数年。いまや現業の切り離しや民営化だけでは間に合わないほどに、政府の病は重い。「今後25年間、イノベーションと起業家精神が最も必要とされるのが政府である」(『ネクスト・ソサエティ』)