子育ての悩みから、偶然アドラー心理学に出会ったという岸見一郎氏。現在、二人の子をもつ俳優の片桐仁さんも、子どもをつい叱ってしまうことに悩んでいるそうです。アドラーの教えでは、子どもを信頼して見守り、必要なときだけ援助をするのが正しい関わり方なのですが、どうしたら実践できるのでしょうか。『嫌われる勇気』の著者二人と片桐さんの鼎談の第3回めをお送りします。(構成:崎谷実穂、写真:田口沙織)

一緒に遊ぶことで
「同じ人間だ」と実感する

片桐仁(以下、片桐) 僕は基本的に受け身の人間で、自分からあれがしたい、これがしたいってあんまり言わないんです。勇気がないというか……自分が何をしたいかよくわからないんですよね(笑)。でも、やってみて楽しかったことは、またやりたいと思います。舞台の仕事も、最初はぜんぜんやりたいと思えなかった。でも気がついたら、「え、公演チラシに名前載っちゃってるじゃん!」と(笑)。

子育てに欠かせない<br />「子どもを叱らない」という勇気片桐仁(かたぎり・じん)
1973年生まれ、埼玉県出身。コメディアン、俳優。多摩美術大学在学中の1996年に小林賢太郎とお笑いコンビ「ラーメンズ」を結成。独特の世界観で人気を博し、以後舞台を中心にテレビ、ラジオなどさまざまな分野で活躍中。1999年より粘土を用いた造形作家としても活動しており、作品集『粘土道 完全版』(講談社)、『ジンディー・ジョーンズ─感涙の秘宝』(講談社)などを出版。2013年4月には渋谷パルコで個展を開催し1万3000人を動員した。ガンプラ・マニアとしても有名で著書に『ラーメンズ・片桐仁のガンプラ戦士ジンダム』(光文社)がある。最新著書は『おしり2─ラーメンズ片桐仁のおしえて何故ならしりたがりだから』(東京ニュース通信社)。

岸見一郎(以下、岸見) ああ、その感じ、わかります(笑)。

片桐 でもやってみたら、すごくおもしろかったんです。舞台って、演出家が神様みたいな存在で、ピラミッド型の関係性ができがちなんです。でも、最終的にはみんながいい舞台を作りたいと思って頑張るので、すごく健全な世界でもある。

古賀史健(以下、古賀) 共通の目的が、チームを引っ張ってくれるんですね。

片桐 たとえば、作家・演出家の鴻上尚史さんは、萎縮せずにみんなが意見を言い合える現場をつくるため、稽古のはじめにゲームをしたりするんですよ。バレーボールでトスをつなぐ、とか。子どもみたいにみんなで遊ぶんです。

古賀 へえ!

片桐 そういうことで、みんな人間だし、同じようにミスもするんだってことを実感できる。やっぱりほら、昔から知ってるスターとか、違う種族じゃないかってくらいキラキラしてたり、いい声だったりするんですよ。でも、そういう人でも自分と5倍、10倍の差があるわけじゃないってわかるんです。