追い込まれ、勝ち負けを繰り返すことが<br />新たな産業を生む力になる<br />――DARPAロボティクス・チャレンジの真実写真は、DARPAロボティクス・チャレンジで優勝した韓国「KAIST」チームのロボットが「ドアを開ける」タスクを行っているところ Photo by Noriko Takiguchi

 6月5、6日の両日、ロサンゼルス郊外でDARPAロボティクス・チャレンジ(DRC)決勝戦が開催された。

 DRCは、災害の際に人間がアクセスできない場所に出かけて行って、救援活動を行ったり緊急に必要とされる処置を行ったりできるようなロボット開発を推進することを目的としている。

優勝は韓国チーム
日本チームは最高でも10位

 もともとこのチャレンジが計画されたのは、2011年3月の福島原発事故後に出動できるロボットがいなかったことが理由だ。事故後に何種類かのロボットが送り込まれたが、いずれも状況をモニターすることはできても、バルブを開けるなどの「対処」はできなかった。そんなことが実際にできるロボットを目指そうというわけだ。

 2013年12月の予選では、東大発の日本チーム、SCHAFTが他を圧倒的に抑えて優勝したのを憶えておられるだろう(関連記事:DOL特別レポート「事故下の原発を想定したロボット競技会で日本チームが優勝!」)。その直前に同チームがグーグルに買収されたため、それと共に大きな話題となった。

 今回の決勝の結果では、残念なことにそうした日本チームの活躍を見ることはできなかった。決勝戦には5チームが登録、そのうち1チームは現地でロボットが故障したために棄権。残り4チームが世界の20チームと競ったのだが、最高でも10位だった。

 そんなこともあって、「日本のロボット技術が負けた」といった見方が必ず出てくるはずだ。しかも決勝戦で第1位を獲得したのは、韓国のKAIST(韓国科学技術院)だ。東京大学が中心となった日本の数チームが冴えない成績で終わったことも考えると、またもや日本の技術力が韓国に追い越されたと結論づけたくなるだろう。

 そうした誤解を解くために「チャレンジ」というしくみも併せて、DRCを説明したい。

チャレンジ精神を盛り立てる
「Xプライズ」財団の存在

 DRC決勝には、1等200万ドル、2等100万ドル、3等50万ドルの賞金が設けられていた。明らかにチームは賞金獲得を狙って競争する。だが、こうした「チャレンジ」というしくみにはもうひとつ真の目的がある。それは研究や開発を加速化させて、普通の状態では生まれないような成果を出させることである。勝つことを目指すという負荷のかかった環境で、戦略、技術開発、チーム力などを最大限に発揮する。その中で、日常では破れない壁を突破することもあるからだ。