情報システムは組織を映し出すと言われたことがあるが、IBMの場合には経営の変革と密接につながった社内コミュニケーションの進化を見ることができる。

 1997年の「e-ビジネス」提唱など、まさにIBMを変えたと言える名経営者ルー・ガースナーがCEOを務めた1993から2002年の間に、IBMはハードからサービス、ソフト中心のビジネスモデルへと転換した。

 2003年からCEOとなったサミュエル・パルミサーノはイノベーションを重視し、個人と組織の活性化を図っている。
 
 では、IBMの社内コミュニケーションは、こうした経営の変化の中で、どう進化してきたのだろうか。

●1996-1999年(ガースナー中期)
イントラネットの情報発信でコミュニケーションを強化

 ハードディスク・ドライブなど主にハードウェア事業を売却し、多くのソフト企業を買収したIBMは、買収企業からの転籍者など社歴の浅い従業員が増えた。

 しかし、それまでのIBMは、社内広報紙誌、ビデオ・メッセージ、部門内回覧など上意下達や、全体会議・部門会議といった従来型の社内コミュニケーションが主流だった。

 そこで、社内コミュニケーションの革新を進めるべく、トップダウンで動いた。e-ビジネスを提唱するIBM自らが、イントラネットによる情報発進を重視し、ついには紙の社内広報紙を廃止し、eメディアつまり電子的にオンラインで情報を伝える企業となったのである。

 社内広報用のウェブサイトを皮切りに、各部門が部門情報を発信するためのサイトをイントラネット上に設置し、社員は社内外のどこにいても迅速に情報にアクセスできるようになった。しかしその反面、イントラネット上に多様なサイトが乱立し、社員が自分に必要なサイトを探し出すのが困難と感じる状況も生じはじめた。

●2000-2006年(ガースナー後期~パルミサーノ初期)
「すべての情報をすべての社員へ」

 IBM社内では、各国各部門がバラバラにサイトを乱立し、混沌となったため、2000年からサイトを整理統合して情報流の整備を図った。デザインの統一、ガイドラインの徹底など、全社的なイントラネットのマネジメントが実施された。つまり、インターネット的に分散した自主自立的なものの集合体から、組織横断的なコーディネーションがされるようになったのである。