三井住友銀行は今年7月上旬をメドに、英大手銀行のバークレイズに対して約1060億円の出資を行なう。バークレイズは約9500億円の第三者割当増資を予定しており、三井住友銀行のほかにも、カタール政府系のカタール投資庁、中国政府系の国家開発銀行、シンガポール政府系のテマセク・ホールディングスなどが出資する。三井住友銀行の出資比率は約2%となる見込みだ。

 今年1月にはみずほコーポレート銀行が米大手証券のメリルリンチに約1300億円の出資を行なった。今回の出資は、それと並び、欧州銀行に対する過去最大級の投資額となる。

 三井住友銀行にとって出資の最大の狙いは海外事業の強化である。バークレイズは英国の旧植民地であるアフリカ、中東などの新興国に強く、三井住友銀行にとっては事業基盤を築く手間が省ける。さらに、資産運用に強いバークレイズから資産運用商品の供給を受けることも期待している。

 一方のバークレイズは、サブプライム関連損失に加え、昨秋にはオランダの大手銀行ABNアムロの買収を断念するなど、経営環境が厳しいなか、アジア地域での事業を強化する狙いもあるようだ。

 「今回の出資は純投資ではない」(三井住友銀行)と、資本のみならず、戦略的な業務提携であることをことさらに強調するのは、みずほコーポレート銀行によるメリルリンチへの出資を意識してのこと。

 みずほコーポレート銀行が行なったメリルリンチへの優先株出資は、「9%という年間配当利回りを目的とした純投資」(みずほコーポレート銀行)。

 これに対して、三井住友銀行は普通株への出資であり、「過去の実績では年間配当利回りは10%超」(三井住友銀行)と、純投資としても魅力的。さらに業務面でのシナジーという一石二鳥を狙おうというわけだ。

 だが業界内では「たかだか数パーセントを出資したところで、業務関係の強化などできるはずがない」と、冷ややかな声が少なくはなく、業務提携の成否は未知数だ。

 今後の注目は三菱UFJフィナンシャル・グループの動向だ。今年末のシステム完全統合を終えれば、メガバンクのなかでサブプライムの傷が最も浅く、財務余力も大きい同社が攻めの経営に打って出る可能性は高い。同社が1980年代に買収した米カリフォルニア州の地銀であるユニオン・バンク・オブ・カリフォルニアの成功もあり、さらなる米地銀買収もうわさされている。

 いずれにせよ、国内事業が頭打ちになるなか、不良債権処理問題が一段落したメガバンク各社にとって海外事業強化は喫緊の課題である。この攻勢の好機に、単なる純投資を超えた本業強化への布石を打てるかどうか、各社の一手が注目される。

(『週刊ダイヤモンド』編集部 松本裕樹)