世界同時株安に歯止めがかからない。ニューヨークダウは2月25日以降、5日続落。合計で624ドル下げ、7000ドルの大台もあっさり割り込んだ。3月3日の終値は6726.02ドルと、1997年4月以来の水準に沈んだ。

 日経平均株価も低迷を抜け出す気配がない。3日、4日と連続して昨年11月に付けた金融危機後の最安値7281円90銭を一時割り込んだ。欧州の株式市場も下落基調が続いている。

 株価下落に歯止めがかからないのは、やはり市場で燃え盛る一方の金融不安のためである。

 端的な例がセオリーとまったく逆の動きを見せたシティグループのCDS(クレジット・デフォルト・スワップ)スプレッドだ。シティの国有化報道が流れた2月20日以降、シティのCDSスプレッドはそれ以前の500ベーシスポイント台後半から600ベーシスポイント台半ばに急拡大した。

 本来、国の関与が強まることは、社債を持つ投資家にとっては償還の確実性が高まることを意味する。スプレッドは縮小するはずだ。にもかかわらず、拡大するのは財務体質の悪化への懸念がより強いからにほかならない。

 米財務省は、優先株の普通株への転換によってシティの議決権株式の最大36%を保有する支援策を発表したが、資産査定を開始しようという矢先に普通株転換を発表したことで、「査定結果が確定するのを待てないほど財務体質が悪化しているのでは」(中空麻奈・BNPパリバ証券クレジット調査部長)との見方を市場に強く抱かせた。

 あくまで優先株の転換であり、新たな資金を投入するわけではないことも、「財政赤字拡大を懸念するあまり公的資金を出す余裕がなくなっている」(中川隆・大和証券SMBC金融市場調査部次長)という市場の疑念をいっそう裏づける結果となった。

 市場は国有化によって強制的に不良資産処理を進めるしかないとの見方に傾いている。しかし、こうした実効性ある対策を求める市場の声に、米国の政策当局は応えられていない。金融危機克服、景気浮揚のシナリオは見えてこない。オバマ政権の手詰まりを市場は見透かし始めている。ニューヨークダウは6000ドル台前半まで下落するとの見方も出てきた。

 米国経済に回復の兆しが見えないとなれば、輸出に依存した構造を持つ日本経済の先行きも暗い。日本の株価下落は当然だ。自国市場の下落で買い持ちポジションの縮小に迫られた外国人投資家の売りも下落に拍車をかけた。

 当面は、3月決算を睨んだ株価下支えを狙った株式買い取り、追加経済対策への期待でやや持ち直すと見る向きも多いが、それも一時的なもの。決算期末を越せば日経平均株価が金融危機後の最安値を切ってくる可能性は大きい。

 年初までの株価を支えたオバマ政権への期待が剥落するなかで、株価の底が抜け始めた。

(『週刊ダイヤモンド』編集部  竹田孝洋)