取締役の退任を求める株主らの怒号が飛び交った、シャープの株主総会。明解な構造改革の道筋すら示せず、歯切れの悪い回答を繰り返す首脳陣の下で、時に同社の屋台骨を支え、また業績悪化の元凶となってきた液晶事業が、いよいよ迷走し始めた。(「週刊ダイヤモンド」編集部 中村正毅)

シャープ液晶事業、残留経営陣の下で深まる迷走取締役の選任議案に反対した少数派の株主たちの声は、シャープの首脳陣に果たしてどこまで響いているか
Photo by Masaki Nakamura

「株主をばかにするのもいいかげんにしろ」「経営トップの責任の取り方に不信感が芽生えている」「社長がそのまま居座るなんて考えられない」

 経営再建中のシャープが、6月23日に大阪市内で開催した株主総会は、荒れに荒れた。

 過去最大となる5453億円の連結最終赤字を計上した2年前の総会は、所要時間が2時間23分。それが今年は、例年の2倍以上となる延べ23人もの株主が質問台に立ち、所要時間は過去最長の3時間23分に及んだ。

「聖域なき構造改革」をうたいながら、2015年3月期に2223億円もの巨額赤字を計上し、それでも経営のトップ3人が辞めないという状況に、株主から相次いで怒りの声が出たのは無理もない。

「私が中心となって作った新たな中計を達成することが、使命だと考えている」(高橋興三社長)

 事前に用意していた想定問答を、棒読みするような回答が火に油を注ぐ悪循環の中で、総会の終盤、高橋社長が珍しく感情をあらわにする場面があった。

 それは、ある株主から「業績を悪化させておきながら、仲良し3人組の2人(水嶋繁光会長と大西徹夫副社長兼執行役員)が残る基準は一体何なのか。教えてほしい」と問われたときだ。

 高橋社長が気色ばんだように「仲良しでは(経営は)やっていられない。メディアがそう書いているだけだ」と、想定問答を無視して語り始めたのだ。

 ただ、その後は気を取り直したように「水嶋は代表権がなくなったので、いわゆる渉外をメインでやっていく。大西は取締役を外れるが、売り上げの約3分の1を占める液晶事業で、カンパニー長を支える構造改革担当に専念する」と、質問に正面からは答えず、人事異動の情報を伝えるだけの回答にとどめた。