ジャーナリストという職業柄、ホテルを利用する機会は少なくない。取材ともなれば日本国内のみならず、世界中のホテルを利用する。たとえば、記者会見やインタビューのみならず、会合やちょっとした打ち合わせにも、その利便性からホテルを使うことが多い。さらに、秘密会合や深夜のインタビューなどでは、ノウハウを持っている都心のホテルこそ、最適の取材スペースとなる。

 じつは、取材対象でもある政治家も同様だ。たとえば、安倍晋三前首相は、グランドハイアット東京やパークハイアット東京などのハイアットグループ、小泉純一郎元首相は、赤坂プリンスホテルやザ・プリンス・パークタワー東京などのプリンス系ホテルを多用していた。

 政治家にしてみれば、利便性のみならず、融通が効くのも一種の魅力なのだろう。それぞれの好みは異なるが、こうしてホテルが政治の舞台になるのは古今を問わず、決して珍しいことではない。

 最近でも、辞意表明をした小沢一郎民主党代表が、一時身を隠していたのが東京駅近くの八重洲富士屋ホテルであった。

 騒動当日の夜、政治記者たちの間からはなぜ富士屋ホテルなのか、という疑問の声が挙がっていた。じつは、富士屋ホテルは、田中角栄元首相の“刎頚の友”である小佐野賢治氏が、社主を務めていた国際興業グループの中核企業である。なるほど、そう考えれば、田中角栄の秘蔵っ子でもある小沢氏がそこに潜伏していたのにも合点が行く。

 何を隠そう、筆者もかつてこの富士屋ホテルのチェーンのひとつの山中湖ホテルで働いてことがある。当時、そのホテルには、金丸信氏や石原慎太郎氏などの政治家たちが頻繁にやって来ていた。やはり政治とホテルは切っても切れない縁があるのだろう。

 とはいえ政治家相手の取材活動の主たる舞台は、永田町のある東京に集中する。そのため、現在の筆者の仕事上、圧倒的に都心のホテルを利用する機会が多い。