安倍総裁再選へ向けた旗揚げの「勉強会」が、ふたを開けると「大放談会」に。メディアも企業も内閣法制局も、安倍政権の統制圧力にさらされている。(AERA編集部・野嶋 剛、宮下直之)

自民党若手が開く「報道圧力」勉強会の真相勉強会での沖縄メディア批判や言論統制を期待するような主張が、安保法制法案の衆院採決を今月中旬にも控えた自民党を揺さぶっている

「つぶす」

 沖縄の新聞社に勤める中堅のA記者は、この言葉を再び耳にしようとは思いもよらなかった。6月25日午後に自民党本部で開かれた私的勉強会の「文化芸術懇話会」。講師に招かれた作家、百田尚樹氏が、こう言い放ったのだ。

「あの二つの新聞社に、本当にもう私、目の敵にされて。本当に沖縄の二つの新聞社は絶対つぶさなあかんのですけど、沖縄県人がどう目を覚ますか」

 A記者は、10年ほど前の東京・高輪での夜を思い出した。

 深夜11時ごろだった。防衛庁長官を議員宿舎で夜回り取材していた。普天間飛行場の辺野古移設をめぐり、計画で想定されている海域での海草などの「被度」の想定が、実態よりも小さく見積もられているのではないか、と質問した。すると、この長官はすごんだ。

「そんなことを書けば、おたくをつぶすぞ」

 大臣の言葉とは思えなかった。そして、A記者が言うように被度は実際より小さく見積もられていて、後日、修正された。

「政権に都合の悪いことを書くと、つぶしてやるという発想がショックでした」(A記者)

 この長官は引退しており、安倍氏とは近い関係ではなかったが、自民党の体質がそこからかえって浮かび上がる。

 今回、つぶす発言以上に失望したのは、会合後、百田氏がツイッターに書いた「ほとんど読んでいない」という言葉。A記者は言う。

「私たちは意見の異なる産経新聞も一生懸命読んでいます。でも、百田さんや政治家は沖縄の新聞を読まずに批判する。沖縄はこんなものだと、決めつけているからなんですね」