中国人の誰もが五輪に賭けた。そして2度目の6000ポイントを夢想した。だが、8月1日の上海総合株価指数は2775ポイント。昨年10月にピークをつけたその半分を下回ってしまっている。物価高騰を株で埋め合わせしてきた庶民の、その憤懣はどこに向かうのか。ポスト五輪はむしろ格差問題がクローズアップされるだろう。

 「中国加油!(中国がんばれ)」――。北京五輪を前に上海市民の期待感も高まるが、しかし、彼らにとっての最大の関心事は株価だ。「株はどうなっちゃったのさ」「五輪前に上がるんじゃなかったの」。それが彼らの本音。株にほとんどの財産をつぎ込んでいる彼らは、「上がったと思ったら翌日には下がる」最近の市場に不満タラタラだ。

 「絶対大丈夫、僕を信用して。あなたを必ず儲けさせてあげるから…」

 そう熱く口説くのは、上海の某外資系銀行の中国人営業マン。07年も終わろうとする頃、彼はエクイティファンドを手持ちの顧客に熱心に勧めていた。この商品は集めた資金を上海A株で運用するというものだ。

 「この短期間のうちに、あなたの50万元(約750万円)は70万元、80万元になるはずですよ。なんたって2008年は北京五輪があるから・・・」

 この言葉にグラッと来た顧客たち、その名前が彼のPCのリストに追加された。

 彼ら“プチリッチ”の五輪の夢は砕けた。だが、その痛手はさほど深刻ではない。問題はほとんどの現金を株につぎ込んだ庶民たちだ。

誰もが夢見た
2度目の6000ポイント

 そもそも、上海庶民の株への投資は1990年にさかのぼる。上海証券取引所が開設されると庶民の金がここに集中した。不動産を買うほどのまとまった資金がないため、「増やす」といえばこの選択しかなかった。しかし、儲けなどほとんどなかった。手持ちの株の塩漬け状態は、97年のアジア通貨危機を経て05年末まで続いたのである。

 ところが、北京五輪がいよいよ目前のものとなると、投資の機会が到来したとばかりに買いに転じ、上海株式市場は06年春からいよいよ上げ基調に入った。07年2月は上海総合株価指数が8.8%急落、「世界同時株安」現象が起こるも、その後、どんどん上がる株式市場に誰もが呑み込まれていった。