『週刊ダイヤモンド』

 1月31日に放送されたNHKスペシャル「無縁社会」はご覧になりましたか。ネットでも随分話題になったので、ご存じ方も多いかと思います。

 「身元不明の自殺と見られる死者」や「行き倒れ死」といった“無縁死”が、いまや年間3万2000件に及ぶと番組では報じていました。血縁、地縁、社縁……、これまでの日本社会を形成してきたさまざまな「縁」が断絶し、現代日本社会が深刻な「無縁社会」に突入しているという、衝撃の内容でした。

 放送の翌週、番組のプロデューサーに会いに行きました。「この問題は、あらゆるメディアで訴えかけていくべきもので、みんなで解決策を考えていけるといいですね」。そんな話をして、週刊ダイヤモンドでも特集を組もうと考えている旨を伝えました。こうして生まれたのが、今週の特集です。

 「無縁化」の実態を探るべく、本誌記者が「遺品整理業者」に体験入社し、孤独死の現場に立ち会うなど、企業取材などが中心の通常の特集とは違ったハードな経験も多々ありました。

 孤立した高齢者や、自殺の問題など、扱うテーマも重苦しいものが大半です。でも、無縁化というテーマは、いまやあらゆる世代が直面する重大な問題であることもわかりました。

 当のNHKスペシャルの制作陣にもご登場いただき、座談会形式で番組を作った経緯や、取材秘話などを話してもらいました。番組を作った方々も口を揃えて「取材しながら他人事ではないと感じていた」と語っていたのが印象的でした。

 そして、「だからこそ石を投げただけでは終わらせず、継続してこの問題には携わっていきたい」と。実際NHKは、1回目の放送後もニュース枠などでも継続してこの問題を採り上げ、一種のキャンペーンを展開しています。

 我々も、単に深刻な無縁社会の実態を伝えるだけでなく、解決策を提示したいと考え、取材を進めてはきましたが、取材すればするほど一筋縄ではいかない難問であることがわかりました。

 正直言って、明快な答えは示せてはいません。ただ、お読みになった皆さんが、それぞれの立場で、「自分は何をすればいいのか」を考えていくヒントを散りばめることはできたかと思っています。

 この特集が発売される週末、4月3日には、夕方4時から2時間の特番で前回の再放送とニュースで扱った内容を再構成して放送するそうです。また、夜10時には「追跡AtoZ」でも、さらに広がっている無縁社会の現状を採り上げるとのこと。

 この機会に、多くの皆さんが、まさに「無縁社会は自分も無縁ではない」ことを考え直すきっかけにしていただければと思います。

(『週刊ダイヤモンド』副編集長 深澤 献)