混合診療問題を蒸し返す「患者申出療養」は誰のための制度か

 来年4月、「患者申出療養(かんじゃもうしでりょうよう)」という新しい医療制度がスタートする。

 患者申出療養は、難病やがんなどの患者からの希望によって、日本では承認されていない医薬品などを健康保険が適用された治療と併用できるようにする制度で、現在、厚生労働省で具体的なしくみ作りが行われている。

 制度導入のきっかけとなったのは、昨年の春に規制改革会議で提案された「選択療養制度(仮称)」だ。

「選択療養制度(仮称)」については、患者団体、健康保険組合、日本医師会などが次々と導入反対の声を上げ、本コラムでもその危険性について指摘した。

 だが、「患者申出療養」と看板をすげ替え、昨年6月24日に閣議決定された「規制改革実施計画」に盛り込まれ、今年5月27日に成立した医療制度改革関連法で正式に導入が決定。

 患者申出療養は、当初、規制改革会議が提案した荒唐無稽な「選択療養制度(仮称)」に比べれば、一応の安全性や有効性が担保され、将来的な健康保険適用の可能性も示されることにはなった。

 この患者申出療養について、政府は「困難な病気と闘う患者」を救うためのものと説明しながらも、実際には当の患者たちの声をほとんど聞かずに作られたもので、規制改革会議での提案があった当初から、患者団体は強い懸念の声をあげ続けている。

 なぜ、患者も望まない制度を、国は躍起になって導入したのか。今回は、日本の「混合診療」をめぐる問題の変遷を整理してみたい。

混合診療の原則禁止は
医療の安全を守るための規制

 日本の医療制度では、いわゆる「混合診療」が原則的に禁止されている。

 日々、進歩する医療技術。数え切れないほどの医薬品や医療機器の研究・開発が行われている。だが、開発されても、実際には私たちの目に触れずに消えていくもののほうが多い。それは、医療が人の命に直結するものだからだ。