前回の『ミイラ遺体になるまで 48歳「引きこもり」男性が放置された事情』の記事に対して、たくさんの反響をいただいた。

 あまりの数の多さに、すべてのメールに返信できていないことを申し訳ないと思いつつ、これから少しずつ対応して行きたいと思っている。

無理心中の道を選ぶ人も
高齢化した“引きこもり親子”の葛藤

「親亡き後」を憂うる<br />引きこもり親子の悲観と希望高年齢化する「引きこもり」。それと同時に、親たちはさらに高齢化しており、自分たちが亡くなった後を憂うるケースは少なくない

 地域の中で静かに高年齢化していく“引きこもり親子”の問題は、それぞれが孤立して行き詰っていく中で、将来を悲観した事件につながることもある。

 今年6月末にも、東京都葛飾区で、79歳母親と55歳の長男が無理心中を図る事件があった。報道によると、年老いた母親は足が悪く、長男が廊下の手すりから母親を転落させた後、自分も飛び降りて無理心中を図ったとみられる痛ましい出来事で、事情はよくわからないものの、「助けて」の声を上げられずにいる当事者や家族にとっては、決して他人事ではない。

 最近も、奈良市の団地の一室で、年老いた母親と長男の遺体が見つかった事件について、警察は、母親が長男を殺害して自殺した無理心中と断定。「定職に就かない長男の将来を悲観して殺害に至った」と結論づけ、捜査を終結したという。

 双方が高齢化していくとともに、こうした事件は増えていく。

 先行きの見えない未来。同居している当事者たちは、親が病気などで倒れたとき、親戚や身内から「働いていないんだから」と、よく介護を迫られるという。

 その一方で、削られていく年金や生活保護などの社会保障費。不十分な情報のために選択肢がなく、事件として顕在化するのは、氷山の一角に過ぎない。