ツイッターやfacebook、LINEなどSNS利用者が増えるなか、それをどうビジネス戦略に活かすかで悩む企業も多い。トムソン・ロイター・マーケッツは、9月2日に「ソーシャルメディア活用の基本と事例~ソーシャルメディアの企業活用の鍵は会話にある~」をテーマにネット証券を含むオンラインサービスを展開する証券会社との勉強会を開催。SNS活用という新たな可能性と課題対応へのヒントを提案した。

利用が急増するSNS
活用次第では顧客の囲い込みも

 総務省情報通信政策研究所が今年5月に公表した「平成26年情報通信メディアの利用時間と情報行動に関する調査報告書」によれば、SNSの利用率は62.3%で、1年前に比べて9.3%、2年前からは20.9%と増えている。なかでも20代では95.0%、30代は82.6%が利用するなど、若年層を中心にコミュニケーションツールとして定着した様子だ。それに呼応するように、スターバックスコーヒーや無印良品、ユニクロ、ローソン、JAL、ANAなどの企業がソーシャルメディアマーケティングを積極的に行い、効果をあげている。

 しかし、金融機関からは「アカウントはあるものの、公的な情報発信に留まっている」「PRなどプレスリリース替わりにしか使えていない」という声や、「他の業界より対象顧客の絶対数が少ないため活用は難しいと思っている」「KPI(数値計画と目標管理)をどうしたらいいかわからず積極的になれない」などのネガティブな声も聞こえてくる。

徳力基彦氏
アジャイルメディア・ネットワーク 取締役CMO ブロガー NTTやIT系コンサルティングファーム等を経て、2006年にアジャイルメディア・ネットワーク設立時からブロガーの1人として運営に参画。「アンバサダーを重視するアプローチ」をキーワードに、ソーシャルメディアの企業活用についての啓蒙活動を担当。09年2月に代表取締役社長に就任し、14年3月より現職

 企業のSNS活用に詳しい徳力基彦氏は、その理由として、炎上することへの懸念やコンプライアンス上の問題に加え、金融というビジネスの性質上、小売業などに比べて効果が測定しにくいことがあると指摘する。

 とはいえ、海外の金融機関のなかには、SNSの双方向性という特性を活かしてファンを増やすことに成功している事例があることも事実。SNS上でお金や投資について話すことに抵抗があるというイメージはあるものの、自分の投資手法などを公開している個人投資家もいる。活用の仕方次第では効果が期待できるのではないかと思っている担当者も少なくはないだろう。しかし、それを実現するためにはどうしたらいいのか。

 今回の勉強会は、他の消費産業とは違い金融業界では難しいとされている課題をあえて取り上げ、マーケットリーダーである証券会社とソーシャルメディアのエキスパートと意見交換、アイディアを模索したいという趣旨で、トムソン・ロイター・マーケッツが企画したもの。徳力氏による講演と野村総合研究所の五十嵐文雄氏を交えたフリートークを通じて、この課題にどう対応し、いかにSNSを有効活用するかについて提案が行われた。