耳を疑うほどの巨大な不正事件
ドイツ企業の雄に大きな痛手

VW不正問題を生み出したドイツ企業の覇権主義抗議デモをする環境保護団体 
Photo:picture alliance/AFLO

 9月22日、ドイツのフォルクスワーゲン(VW)は、米国の排ガステストをクリアする目的で違法なソフトを使用したことを認めた。同社のヴィンターコーン会長は「心の底から謝罪する」とした上で、今回の不正問題に関連する車の数は1100万台に上る可能性があると発表した。

 今回の不正問題の始まりは、9月18日に米国の環境保護局(EPA)が、VWが規制テストのときだけ排気ガスを減らす不正なソフトを使っていたと公表したことだった。

 不正問題の発表当初は、あまりに大きな事件であったこともあり、耳を疑う専門家もいたようだ。しかし、ヴィンターコーン会長が事実関係を認めたことによって、事態の重大性が次第に浮き彫りになっている。

 米当局が捜査を行っている間、VWは米国内でのディーゼル車の販売を中止するものの、不正事件で同社が失った顧客の信用は何物にも代え難い。

 実際のリコールなどのコストも大きくなるはずで、最高180億ドル(約2兆円)の罰金が科される可能性も報じられている。VWが受ける痛手はかなり大きくなる。

 元々、ディーゼルエンジンは燃費が良いことが大きなメリットだが、窒素酸化物などの大気汚染物質を多く排出する問題があった。VWをはじめ欧州自動車メーカーは、高い技術力で汚染物質の問題を解決したと言われてきた。

 欧州自動車メーカーは、排ガス問題を解決したディーゼル車を“クリーンディーゼル”として、ハイブリッドエンジン中心のわが国メーカーと国際自動車市場で激しくシェア争いを展開する勢力図になっていた。

 VWが、不正ソフトを使ってまで米国の排ガス規制をクリアしようとした背景には、同社の「世界市場を取ってやる」という、一種の覇権主義の考え方があったと見られる。