総選挙は、民主党が予想通りの圧勝で終った。これで9月中旬には鳩山由紀夫民主党代表を首相とする新政権が発足することになった。

 この歴史的転換に際し、私は本欄で「政権ウォッチ」と称し、新政権の動向を期待をこめて注視し、そのときどきの所感を述べることとした。

 周知のように、自民党が下野するのは、結党(1955年)後、93年の細川護熙政権以来2度目のこと。

 したがって、細川政権があらためて検証されるようになり、細川首相の特別補佐を務めた私にも当時の取材が多くなった。

かつてない支持を集めた細川首相
決め手にならなかった鳩山首相

 前回の政権交代と今回のそれを比べると、顕著な共通点は、どちらも小沢一郎氏が政権基盤(党)を牛耳る立場にあることだ。この点については別の機会に語る。

 相違点は数多くあるが、ここではまず「党と首相の力関係」の違いを指摘する。

 小泉純一郎首相が党を敵にまわしても指導力を発揮できたのは、小泉人気が党の人気を圧倒していたことによる。

 細川政権の場合も同じこと。細川首相の出身会派(さきがけ・日本新党)はわずかに50名。だが、当時戦後最高と言われた細川人気は、与党(8党会派)の存在感をはるかに上回っていた。世論のかつてない支持によって、首相は与党に対し、力関係で断然優位に立っていたのである。

 今回の新政権ではどうだろう。鳩山人気はあるが、民主党に対する人気や支持より大きいとは言えない。共同通信の調査でも民主党に投票した人で、「党首が誰か」が「決め手にはならなかった」人が6割を越えている。

 民主党に対する支持には、民主党の政策に対する積極的支持もあるが、反自民感情による支持も大きい。そこに、鳩山、小沢、菅直人、岡田克也など各氏の人気が加わっている。しかし幹部指導者の中にはガリバーはいない。

 こう考えると、新政権では「鳩山首相」より民主党が優位に立つことになる。首相と党との力関係がそうだとすると、そこに意見のズレが生じたとき、党の意向がより反映されるようになる。

 これが、細川政権との大きな違いの1つである。

 もちろん、新首相はこの力関係を逆転させることができる。それは、常に世論と結託して愚直に政権公約の実現に専念することだ。

 その手始めになるのが政治機能を強化するための人事である。