今やグローバル企業になったLIXILグループが、新しい中期経営計画で、ようやく大風呂敷を広げることをやめた。それでも、株式市場の信頼を取り戻すことは容易ではない。(「週刊ダイヤモンド」編集部 池冨 仁)

 9月15日、LIXILグループが開いた中期経営戦略説明会では、外国人関係者の姿が目立っていた。会場内は、外資系企業の新製品発表会のように華やかで、母体となった旧トステムに色濃かった営業主体でのし上がってきた野武士集団の泥くささはまるで感じられない。

 この日、藤森義明社長兼CEOが目標として掲げたのは、あらためて2018年3月期の連結売上高を2兆円に定めるとの方針だ。その内訳は、国内が1兆3840億円、海外で7500億円である。

 併せて、16年3月期の決算からIFRS(国際会計基準)を適用するため、現行のJGAAP(日本会計基準)の営業利益に相当する“事業利益”ベースに変更するとした。その事業利益は、「3年後に1000億円以上にすることが目標だ」と力説した。この数字は、向こう3年間の年平均成長率23.5%を見込む計算である。

 LIXILとしては、「20年までに売上高3兆円」との従来の方針を変えてはいないが、今回は大風呂敷を広げることなく、イケイケどんどんの姿勢が少し弱まった格好だ。今年6月に不正会計処理が発覚したドイツの子会社ジョウユウの破産を受けて、向こう3年間で最大約660億円の特別損失を出す羽目に陥り、世間を騒がせた影響があるのだろう。

 また、今年4月より“世界統一経営”に踏み出した四つの社内カンパニー(水回り、住宅建材、ビル関係、キッチン)のCEOが一堂に集結し、順番に大まかな方向性を語った。四つのカンパニーのうちで、住宅建材を除く3社のCEOが外国人という経営体制が、現在も進行中のLIXILのグローバル展開を象徴している。

 とりわけ、最も高い成長が見込まれる水回り事業については、18年3月期の売上高を7030億円、事業利益を700億円と掲げた。実に、現状のほぼ倍の規模であり、年平均成長率は35.1%にも上るという意欲的な目標である。

 LIXILにとって水回り事業は、藤森社長が訴える「20年までに、世界で最も企業価値が高く、革新的で信頼される住生活テクノロジー企業となる」というビジョンの実現に弾みをつける成長ドライバーだと位置付けられている。

 しかも、この水回り事業単体で7030億円という数字は、長年背中を追い続けてきたTOTOを追い越し、引き離すことになる。

 というのも、世界中でM&A(企業の合併・買収)を繰り返して企業規模を拡大するLIXILと比較されること自体を嫌がるTOTOは、グループの経営目標として「18年3月期の連結売上高6500億円、営業利益610億円」を標榜しているからだ。

 だが、話はそう簡単ではない。今度は、LIXILが嫌がることがある。株式市場には、次のような指摘が根強い。「海外M&Aなどのイメージが先行するが、毎年のように業績の下方修正を繰り返す。グローバル企業になったといっても、まだ結果が出ていない」(住宅設備業界に詳しいアナリスト)。