社員6万人になっても
ベンチャー精神を維持する考え方とは?

なぜ、グーグルは社員が自ら120%で働くのか?『ワーク・ルールズ!』 ラズロ・ボック 著
鬼澤 忍/矢羽野 薫訳
東洋経済新報社 1980円(税別)

 Googleという会社を今や知らない人はいないだろう。検索エンジンをはじめ、GmailやGoogle MapやYouTube、モバイルOSのAndroidなど、同社のサービスや製品にいっさい触れずにIT社会を生きて行くのは不可能だ。

 さらに最近では、自動運転車、人工知能、ロボットなど最先端の技術開発にも多くのリソースを投入するなど、未来志向の取り組みでも注目を集めている。

 そんな同社は、スタンフォード大学の大学院博士課程に在籍していたラリー・ペイジ氏とセルゲイ・ブリン氏の二人が、大学の研究プロジェクトで開発した検索エンジンをベースに起業した小さなベンチャー企業だった。

 その後16年間で、40ヵ国以上に70を越えるオフィスを構え、売上高660億ドル(2014年12月期)、社員数約6万人のグローバル企業へと急成長した。しかし、これだけの大企業に成長した今でも、守りに入ったり官僚的になったりはしていない。むしろますます自由闊達に新たなイノベーションに挑戦し、成果を出し続けているようにみえる。

 本書は、イノベーションを生み続けるGoogleの組織づくりのルールを、同社の人事担当上級副社長を務めるラズロ・ボック氏が書き下ろした大著だ。同氏は1972年共産主義政権下のルーマニア生まれ。家族とともに自由を求めてルーマニアを脱出した経験をもつ。その後マッキンゼーやGEでの勤務を経て、2006年にGoogle入社。従業員が6000人から6万人に増えていく過程で、Google社の人事システムを設計し、進化させてきた張本人だ。

 本書に書かれているもっとも重要なメッセージは、「採用がすべてだ」ではないかと思う。Googleのように現場主導で発展する企業をつくるために、いちばん重要なことは、企業のミッションに適した人材を集めること、そしてその人材に120%の力を発揮させることなのではないか。自社の現状を簡単に評価したければ、採用にかかっているコストと、教育にかかっているコストを比較してみるとよい。もし教育により多くのコストがかかっているようであれば、考え方を変えるべきなのだ。