2200億円を超える連結最終赤字を出し、液晶事業の再改革を宣言したシャープ。ただその後も収益は悪化の一途をたどり、事業整理がいよいよ避けられなくなった。(「週刊ダイヤモンド」編集部 中村正毅)

「在庫がまた急激に増えているようだ。本当に大丈夫なのか」。今年8月、経営再建中のシャープをめぐって、そうした観測が業界内で一気に広がった。ここで言う在庫とは主に、テレビやスマートフォンに使用する液晶パネルのことだ。

 原因は、北京小米科技(シャオミ)をはじめとした中国スマホメーカーの失速。世界のスマホ需要の3割を占め、年間4億台を出荷する最大市場で需要が飽和し、内需依存の強かったメーカーで液晶の発注が、昨秋以降急速に縮小しているのだ。

 業界内で、今夏までといわれていた需給調整は今も続いており、中国景気の急減速とも相まって、近かったはずの調整の出口が一層見えづらくなっている。

 その影響が、経営悪化に苦しむシャープを在庫増というかたちでさらに窮地に追い込んでいるとあって、経営不安を懸念する声がさらに高まっているわけだ。

 実際に、7月末に発表した2015年4~6月期の業績を見ても、その兆候は見て取れる。

 液晶や家電製品を含めた6月末の棚卸し資産(在庫)は、3442億円。そのうちのおよそ半分は液晶の在庫だ。前年同月で金額を比べると、率にして9%、287億円増えており、月商比で見ると1.67カ月にまで拡大している。

 一見すると、1.67カ月という月商比は、表面上では危機的水準とはいえない。

 一方で、シャープが6年前、世界的な金融危機によって液晶の需要急減に見舞われ、1258億円の連結最終赤字を計上したときの月商比は、1.69カ月。棚卸し資産は4000億円で、その後も在庫増に歯止めがかからず、巨額の減損処理を迫られた過去がある。

 9月末時点で「月商比がさらに悪化している」(関係者)との指摘もあり、悪夢再来が頭をよぎる。

 さらに言えば、シャープの液晶在庫は同社の財務諸表だけを眺めていても、実態は見えない。簿外でも在庫が大きく滞留している可能性があるからだ。